日電歩道

日電歩道（にちでんほどう）

日電歩道は、富山県黒部市の仙人谷ダムから中新川郡立山町の黒部ダムまで、黒部川上流に沿って約16.6キロメートルにわたるトレッキングコースです。この道は、黒部峡谷の主要部分である「下廊下」を通っており、上級者向けの登山道として知られています。コースの途中には、S字峡、十字峡、白竜峡など魅力的な景勝地が点在し、登山者に美しい自然を提供します。

この歩道は、一般的な登山道とは異なり、全体的に平坦であるものの、断崖絶壁沿いを進むため、注意が必要な箇所が多数存在します。コース上には避難所やエスケープルートはなく、最寄りの山小屋は仙人谷ダムから2キロメートルほど進んだ阿曽原温泉小屋か、黒部ダムから南に30分ほど足を運んだロッジくろよんです。日電歩道という名称は、日本電力がかつて水力発電所の建設に向けた調査のために開削したことに由来しています。この工事は1925年に始まり、1929年には現在の黒部ダム付近まで道がつながりました。

開削当初は道幅がわずか50センチメートルという狭い部分もあり、岩壁から針金で木を吊り下げて桟道の代わりに使われたこともありました。その後、黒部ダムの建設に伴い、道の拡幅が行われ、今日の形に整備されました。現在では「旧日電歩道」という名称でも知られています。

この歩道は、関西電力が1951年に黒部川水系の日電の施設を引き継いだことで、関電の管理下に入っています。関電は毎年整備を行う義務があり、これに数千万円と500名以上の人員を投入しています。しかし、整備される時期は初夏の残雪が消えた頃から始まり、開通は例年9月下旬から11月にかけての短い期間に限られます。特に残雪が多い年には通行できる期間が数週間に制限されることがあります。

道の最狭部は50センチから60センチであり、谷底に対しては100メートル以上の落下が伴うため、通行するには高度な技術と経験が求められます。道中には丸太を渡しただけの桟道や、木の梯子での高低差を乗り越える区間があり、転落事故が頻発しています。年間通行者は約3,000人ほどですが、開通の発表は事故や危険を保証するものではありません。実際、2011年には地震による崖崩れが発生し、その後通行が不可能となりました。

日電歩道のコース概要を見てみると、欅平からの水平歩道は仙人谷ダムで終わり、ここから日電歩道が始まります。最初はダム堰堤を右岸側に渡り、黒部川と接する幅広い道を進むと、長い吊橋が架かっています。吊橋を渡ると急登が続き、S字峡では川の流れが美しくカーブしています。また、十字峡では西側から流れる剱沢と東側からの棒小屋沢が合流しており、その美しい景色を見渡せるポイントも存在します。白竜峡では急流となり、タル沢が細く流れ込み、そして多くの見所を含むコースが続きます。

最終的に、黒部ダムの堤体が見え、登り坂を経て樹林帯の中をジグザグに進むと、関電トンネル電気バスの黒部ダム駅に到達します。この駅からはダムの展望台へ向かうこともでき、または奥廊下や五色ヶ原方面へアクセスすることが可能です。富山県の山のグレーディングでは、日電歩道を完歩するために必要な体力は「9」とされ、技術的難易度も最高レベルの「E」に位置付けられています。登山に挑む際は十分な準備と注意が必要です。

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