仙人谷ダム

仙人谷ダムについて

仙人谷ダムは、富山県黒部市宇奈月町の黒部奥山国有林内に位置しており、関西電力が管理する重力式コンクリートダムです。その重要性から、土木学会の「日本の近代土木遺産」にも認定されています。このダムは、黒部川の下流に設けられた黒部川第三発電所（黒三発電所）に水を供給し、発電を行うために建設されました。

建設の経緯

もともと仙人谷ダムは、黒部川水系の十字峡近くに建設される予定でしたが、1934年に黒部峡谷が中部山岳国立公園に指定された影響で、現在の場所に建設されることとなりました。第二次世界大戦前の日本では、軍需物資を生産するための電力源の確保が重要視されており、国家総動員法により、大規模な人海戦術が採られました。このため、多くの作業員が集められ、当時の平均月収の10倍以上にあたる報酬で工事が進められました。

工事は1936年にスタートし、1939年には阿曽原から仙人谷へ至る水路隧道が完成。その後、1940年にダム本体が完成し、同年の11月から発電が開始されました。このダムの最大出力は8万キロワットで、当時の日本で最大の発電所でした。

資材運搬とエレベーター

ダムの建設にあたり、資材の運搬には黒部専用鉄道を利用する計画でしたが、欅平の上流は急峻であるため、トロッコ列車だけでは運搬が困難でした。このため、高さ200メートルの縦坑が掘削され、トロッコ運搬用のエレベーターが設置されました。エレベーターを使って運ばれた資材は仙人谷まで隧道を通る鉄道で運ばれることとなります。

また、ダムの近くには関西電力の職員宿舎があり、仙人谷駅が関西電力黒部専用鉄道の最寄り駅として設けられています。この部分はトンネルを出るため、冬でも安全に運行できるように設計されています。

登山道と堆砂問題

仙人谷ダムは、登山道である水平歩道や日電歩道、雲切新道の交差点にも位置しており、旅行者にとって魅力的な場所です。それに伴い、ダム管理施設を通過するルートも設定されています。このため、登山者は施設内部に入って通行することができます。

一方で、黒部峡谷のV字谷は浸食が激しく、ダムの堆砂率が高い課題があります。昭和40年代には堆砂率が80％を超えるほどで、2004年時点では89％に達しています。これにより、ダムの機能を維持するためには今後の対策が重要です。

関連項目

仙人谷ダムは、その工事の難しさを描いた小説『高熱隧道』や水没した温泉である東谷温泉、そして中部地方のダム一覧に関する情報にも関連づけられています。このように、仙人谷ダムは歴史的価値とともに、現代のエネルギー需要に応える重要なインフラでもあるのです。

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