日高線運輸営業所

概要

日高線運輸営業所は、北海道旅客鉄道（JR北海道）がかつて設置していた組織で、日高本線の管理運営を担当していました。この営業所の事務所は、北海道苫小牧市にある苫小牧駅の構内に置かれており、所属略号は「日」と定められていました。日高本線で運行する列車を運転する運転士や、使用される気動車などの車両もこの営業所に所属していました。

設立の経緯と目的

営業所が設立される以前、日高本線の運営はJR北海道の本社にある鉄道事業本部が直接行っていました。本社直轄のもと、日高本線は経営改善のためのモデル線区と位置づけられ、新型車両の導入やワンマン運転の推進などが進められていました。しかし、さらに地域の実情にきめ細かく対応し、より弾力的かつ機能的な運営体制を築くことを目指し、日高線運輸営業所が設立されることになりました。設立にあたり、ダイヤグラムの作成、施設の維持管理、予算の執行など、運営に関する権限の一部が本社からこの営業所へ委譲されました。これはJR北海道内で初めての試みであり、一部では会社内の組織を細分化し、権限を移譲するという意味で「JR北海道内の分割・民営化」とも評されました。

しかしながら、営業所の設立プロセスにおいては、沿線住民への説明が十分ではなかったという指摘もありました。このため、「十分な説明がないのはおかしい」「廃線に向けた布石ではないか」といった不安の声が沿線地域に広がり、一部の地元新聞社からは批判的な論調で報じられるといった側面もありました。

組織と特徴

日高線運輸営業所が設立された当初の大きな特徴の一つは、鉄道輸送とバス輸送を連携させた一貫した旅客輸送体制の構築を目指していた点にありました。この構想に基づき、当時日勝線でバス路線を運行していた自動車部門の現業機関である様似自動車営業所が、この日高線運輸営業所の傘下に組み込まれていました。しかし、2000年 4月1日に様似自動車営業所がジェイ・アール北海道バスとして分社化されたことに伴い、日高線運輸営業所の直轄組織ではなくなりました。組織としては、主要な駅である鵡川駅、静内駅、浦河駅なども運営に関与していたと見られ、特に鵡川駅には工務関係の社員が配置されるといった特徴があったようです。

運転業務と所属車両

日高線運輸営業所に所属する運転士は、主に日高本線のうち、起点である苫小牧駅から鵡川駅までの区間で列車の乗務を担当していました。また、日高本線で運行される列車に使用される気動車も、この営業所の所属車両として管理されていました。設立当初、日高本線の主力車両として期待されたキハ130形気動車が11両配置されましたが、経年劣化などにより2002年までに全車が廃車となりました。その後、1999年からは性能向上形車両であるキハ160形気動車が1両所属していましたが、こちらは2008年に苫小牧運転所へ転属しています。

歴史

1990年 7月1日：地域密着型運営体制への移行を目指し、日高線運輸営業所が発足しました。
2000年 4月1日：関連組織であった様似自動車営業所が、ジェイ・アール北海道バスへの分社化に伴い、営業所の直轄から外れました。
2006年 9月1日：日高本線の主要な中間駅の一つであった鵡川駅が無人化されました。
2021年4月1日：高波被害などの影響を受け、日高本線のうち鵡川駅と様似駅間の116.0キロメートルにわたる区間の運輸営業が廃止されました。

現在の状況

日高線運輸営業所は、JR北海道が定めている「安全管理規定」の組織体制図に、2010年度までは正式な組織として記載されていました。しかし、2011年度以降の規定からはその記載が確認できなくなりました。現在、JR北海道の公式ウェブサイト上においても、この営業所に関する情報は一切見当たりません。公式な組織としては廃止されたか、他の組織に統合された可能性が高いと考えられます。しかし興味深いことに、日高本線の沿線に位置する一部の自治体が作成している「国民保護計画」においては、現在もなお緊急時における連携対象組織として「日高線運輸営業所」の名称が記載されている例が見られます。これは、過去の組織体制情報が更新されずに残存しているものと推測されます。

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