長野県北佐久郡軽井沢町に位置する
旧軽井沢メインストリートは、正式名称を
長野県道133号
旧軽井沢軽井沢停車場線の一部とする、軽井沢を代表する
商店街です。一般には「
旧軽井沢銀座」や「旧軽
銀座」といった通称で親しまれています。
この通りは、
旧軽井沢ロータリーから旧
碓氷峠方面へ向かう約500メートル区間にわたって続いています。かつては江戸時代の五街道の一つ、
中山道における宿場町「
軽井沢宿」が置かれていた歴史ある場所です。現在の
軽井沢駅周辺の「新道」地区からは少し離れた、北側のエリアに位置しています。
その発展は、
1888年(明治21年)にカナダ人
宣教師のアレキサンダー・クロフト・ショーが軽井沢に初めて
別荘を開設したことに深く関わっています。これを機に、国内外の多くの著名人がこの地に
別荘を構えるようになり、彼らを顧客とする商店が集まり始めました。こうして
旧軽井沢メインストリートは、避暑に訪れる
別荘族
御用達の
商店街として独自の発展を遂げました。
その後、
ペンションブームなど観光を取り巻く環境の変化も追い風となり、特に夏場は多くの観光客で賑わうようになりました。これに伴い、かつての
別荘族向け店舗に加え、タレントショップなど一般的な観光客を対象としたお店も増加しました。古くは避暑地としての性格が強く、冬季は休業する店舗が多く見られましたが、1997年(平成9年)に
北陸新幹線(高崎 - 長野間)が開業し、年間を通じて観光客が訪れるようになったことで状況は変化しました。近年では、冬期も営業を続ける通年営業の店舗が増え、一年を通して人通りの絶えない活気ある通りへと変貌しています。
この通りは、時代によって様々な呼び名で称されてきました。戦前は、地元の人々からは「旧道」「本通り」「単に通り」と呼ばれ、避暑に訪れる外国人からは「Main Street」と呼ばれていました。当時の軽井沢では、食料品や生活必需品をこの通りでしか手に入れることができなかったため、日用品の買い物を指して「町に向かう」と言う習慣もあったようです。なお、現在「本通り」というと、
軽井沢駅と
旧軽井沢を結ぶ南北の主要道路(
長野県道133号
旧軽井沢軽井沢停車場線)を指すことが一般的です。
最も広く知られている通称「
旧軽井沢銀座」の由来には諸説があります。一つは、戦前から東京・
銀座にある有名店が夏季限定で出張店を構え、通りに軒を連ねた様子が「
銀座さながら」であったためにそう呼ばれるようになった、という説です。もう一つは、1970年代から1980年代にかけて観光客が急増した時期に、全国各地に存在する「
銀座商店街」の名に倣って、親しみやすい名称として定着したという説です。この名称については、1987年のエッセイで室生朝子が「今は誰がつけたのだろうか、『軽井沢
銀座』と嫌な呼び方で」と記すなど、定着期には様々な受け止め方があったことがうかがえます。しかし、1950年の文献にも「東京の一流商店も出張し軽井沢
銀座が出現する」との記述が見られることから、比較的早い時期から使われていた可能性も指摘されています。
旧軽井沢メインストリートとその周辺には、歴史ある建物や施設、老舗の商店が数多く点在しています。主なものとしては、かつての
旧軽井沢郵便局舎を模した建物が特徴的な
軽井沢観光会館、歴史ある教会建築である
聖パウロカトリック教会や
ショー記念礼拝堂、そして
軽井沢会テニスコートといった避暑地の歴史を感じさせる施設があります。また、名門ホテルとして知られる
万平ホテルや、老舗旅館の
つるや旅館もこのエリアに位置しています。商店としては、
ジョン・レノンゆかりの
フランスベーカリーや、有名な
ミカドコーヒー、そして創業100年を超える
中山のジャムをはじめとするジャム専門店(
ジャムこばやし、
沢屋など)や、老舗のパン屋(
ブランジェ浅野屋)、菓子店(
白樺堂)、家具店(軽井沢彫の
大坂屋家具店、
一彫堂、
軽井沢彫シバザキ)、染物屋(
草木屋)、写真館(
土屋写真館)、靴屋(
サトウシューズスタジオ)などが軒を連ね、通りの歴史を今に伝えています。その他にも、比較的新しいショッピングモール
チャーチストリート軽井沢や、セレクトショップの
サンモトヤマ軽井沢など、様々なジャンルのお店が立ち並び、多様なニーズに応えています。
旧軽井沢メインストリートへのアクセスは、
北陸新幹線・
しなの鉄道の
軽井沢駅から
旧軽井沢銀座入口のロータリーまで、軽井沢本通りを経由して約1.8キロメートルです。徒歩では約25分、車では通常5分程度ですが、特に夏季の観光シーズンは大変混雑し、自動車での移動にはかなりの時間を要することがあります。
軽井沢駅周辺および
旧軽井沢銀座周辺には貸
自転車店が多く、
自転車での移動も快適で人気があります。また、
軽井沢駅北口からは町内循環バスも運行されており、上限200円でエリア内を巡ることが可能です。