明和の大火

明和の大火

明和の大火は、江戸時代中期、明和9年2月29日（1772年4月1日）に発生した大火災です。明暦の大火、文化の大火と並び、江戸三大火の一つとして知られています。この大火は、目黒行人坂（現在の東京都目黒区下目黒一丁目付近）にあった大円寺から出火したため、「目黒行人坂大火」とも呼ばれています。

出火原因

火災の原因は、大円寺に潜んでいた真秀という無宿の坊主による放火でした。真秀は盗みを目的として庫裡に火を放ったとされています。彼は火付盗賊改長官であった長谷川宣雄の配下によって捕縛され、市中引き回しの上、小塚原で火刑に処されました。

火災の状況と被害

2月29日午後1時頃、大円寺から出火した炎は、南西からの強風にあおられ、瞬く間に燃え広がりました。火は麻布、京橋、日本橋などの市街地を焼き尽くし、さらに江戸城下の武家屋敷や神田、千住方面にまで燃え広がりました。一時鎮火したものの、同日夕方には本郷から再出火し、駒込、根岸方面も焼失しました。翌日には鎮火したかに見えましたが、3月1日午前10時頃に馬喰町付近から再び出火し、日本橋地区は壊滅的な被害を受けました。

この大火によって、類焼した町は934、大名屋敷は169、橋は170、寺院は382にも及びました。山王神社、神田明神、湯島天神、浅草本願寺、湯島聖堂などの著名な社寺も被災しました。死者は1万4700人、行方不明者は4000人を超え、犠牲者は合わせて2万人に迫る甚大な被害となりました。老中に就任したばかりの田沼意次の屋敷も類焼しています。この火災は、当時の社会に大きな衝撃を与え、元号が明和から安永に改元される一因となりました。

明和の大火に関する記録

江戸時代の随筆である『耳嚢』には、明和の大火に関する記述があります。この中で、大火は「前表なしとも難極事」と評されており、その突然さと大規模さが示唆されています。

関連項目

* 安永：明和の大火が改元の要因の一つとなった。

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