明日への出発

明日への出発

「明日への出発」（あすへのたびだち）は、昭和歌謡界を代表する歌手、春日八郎氏が1981年に発表したスタジオ録音盤です。このアルバムは、春日氏の歌手生活が30周年を迎えたという記念すべき年、そして彼が所属するキングレコードが創業50周年を迎えたという二つの大きな節目を祝う作品として、特別に制作・リリースされました。

本作は、リリース当時のアナログレコードとして発表された後、時を経て春日八郎氏の逝去後に再び日の目を見ることになります。彼の没後4年にあたる1995年には、「春日八郎を偲ぶ」と銘打たれた追悼シリーズの第一弾として、初めてコンパクトディスク（CD）の形式で復刻リリースされました。このCD盤は1995年4月5日に発売されましたが、残念ながら現在は生産が終了しており、市場では廃盤扱いとなっています。

このアルバムには、全13曲が収録されています。アナログレコードのA面（第1面）には7曲、B面（第2面）には6曲が収められました。中でも、A面に収録された「ふたりの坂道」、「瞼を合せて」、「一年ぶりに」、「津軽三号ひとり旅」の4曲、そしてB面に収録された「恋の長崎雨の街」、「国後の女」の2曲は、アルバムの発表と同じ1981年に、それぞれ独立したシングルレコードとしてもリリースされ、多くのリスナーに届けられました。

アルバム「明日への出発」に収録された全楽曲と、それぞれの制作に携わった作詞家、作曲家、編曲家は以下の通りです。

第1面

ふたりの坂道
作詞: いではく
作曲: 遠藤実
編曲: 京建輔
比叡の女
作詞: 大倉芳郎
作曲: 渡部実
編曲: 山田年秋
瞼を合せて
作詞: 矢野亮
作曲・編曲: 白石十四男
東京・裏町・かもめ唄
作詞: 木下龍太郎
作曲・編曲: 山田年秋
椿の波止場
作詞: 荒川利夫
作曲: 鮫島周二
編曲: 川上英一
一年ぶりに
作詞: もろとみ和人
作曲: 桜田誠一
編曲: 山田年秋
津軽三号ひとり旅
作詞: 矢野亮
作曲・編曲: 白石十四男

第2面

恋の長崎雨の街
作詞: 若山かほる
作曲: 四方章人
編曲: 斉藤恒夫
国後の女
作詞: たなかゆきを
作曲: 林伊佐緒
編曲: 川上英一
嫁ぐ娘に
作詞: 山北由希夫
作曲: 桜田誠一
編曲: 山田年秋
東京酒場
作詞: 木下龍太郎
作曲: 癸生川正治
編曲: 江口浩司
ふるさと便り
作詞: 萬城たかし
作曲: 仲代吾郎
編曲: 山田年秋
信濃旅情
作詞: 丸山敬一郎
補作詞: 木下龍太郎
作曲・編曲: 江口浩司
夜はギターのふるさとだ
作詞: 荒川利夫
作曲: 鮫島周二
* 編曲: 川上英一

これらの楽曲の中には、日本の様々な情景や特定の地名を歌詞に織り込んだものも含まれています。例えば、「比叡の女」では比叡の山、都わすれ、京といった古都の風情が、「椿の波止場」では伊豆大島の椿や三原山が、「津軽三号ひとり旅」では青森が舞台となります。また、「恋の長崎雨の街」では出島、思案橋、平戸、蘇鉄の花、オランダ坂といった長崎の名所や風物が描かれ、「国後の女」では北方領土・国後島、チャチャ岳、流氷といった自然環境が歌われます。「信濃旅情」では、千曲川の流れや信濃路の情景が紡ぎ出されています。これらの具体的な描写が、楽曲の情感を一層深めています。

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