明治大学記念館

明治大学記念館は、東京都千代田区神田駿河台にある明治大学駿河台キャンパスにかつて建っていた、大学の歴史において重要な役割を果たした建物です。

初代記念館

「第八号館」とも呼ばれた最初の記念館は、1911年（明治44年）10月に完成しました。星野男三郎氏が設計を手がけ、島崎清次郎氏が施工を担当しました。煉瓦造りの2階建てで、西洋の切妻屋根を中心に左右に小さなドームを配したデザインでした。1階には玄関や各種標本室、会食所などがあり、2階には記念大講堂が設けられていました。しかし、1912年（明治45年）3月5日深夜に発生した火災により、わずか半年ほどの歴史に幕を閉じました。当時の岸本辰雄校長は病床から駆けつけ、焼け跡の処理や再建を指示しましたが、その姿を見ることなく急逝しました。短い期間ではありましたが、火災当日にも東京市教育会の講演会が開催されるなど、学外のイベントでも利用されていました。

2代目記念館

初代記念館が焼失した同年、1912年（大正元年）12月には早くも2代目が完成しました。こちらも初代と同じく星野男三郎氏が設計し、島崎清次郎氏が施工を担当しました。建築費は、焼失した初代の保険金と大学の基本金の一部が充てられました。デザインは変更され、中央の円形ドームを中心に左右に三角錐の突起を持つ特徴的な外観でした。初代よりも建物面積が増やされ、火災の教訓から設計にも修正が加えられたと伝えられています。この2代目記念館は、大正デモクラシーの波の中で、様々な歴史的出来事の舞台となりました。社会運動家である大山郁夫氏の講演会、「白熱党」と称された雄弁部学生による演説会、さらには警官隊との衝突に至った植原・笹川事件など、大学史を彩るエピソードが数多く生まれました。しかし、1923年（大正12年）9月1日に関東大震災が発生し、再び焼失してしまいます。震災当時、大学は夏期休暇中でしたが、在京の学生たちが中心となって瓦礫の撤去作業にあたり、野球部をはじめとする様々なサークルや団体が復興のための資金を集めるべく全国を奔走しました。

3代目記念館

関東大震災からの復興計画は段階的に進められ、3代目記念館は第3期工事として建設されました。大倉土木が施工を担当し、1927年（昭和2年）7月に着工、1928年（昭和3年）3月25日に竣工しました。地下1階、地上6階建てで、建坪は約278坪、延坪は約1282坪という規模でした。設計は大森茂氏によるもので、建築様式は「和洋折衷のグレコローマン奈良平安式」と評されました。正面玄関には、「暁の鐘」を持つ2人の童子のレリーフ（間部時雄デザイン、小川三知制作）と美しいステンドグラスが設置され、建物に彩りを添えました。そのデザインは一部の学生からユニークな評価も受けましたが、数千人を収容できる大講堂は驚きをもって語られました。講堂は2階から5階までを占め、最大で約3000人を収容可能でした。舞台上部には古代日本の人物像の彫刻が飾られていたと言われています。太平洋戦争中の1945年（昭和20年）4月13日の城北大空襲では屋根などが損傷しましたが、学生たちの必死の消火活動により延焼を免れました。焼け残った記念館の姿は、遠くからも確認できたと語り継がれています。この3代目記念館は、昭和から平成初期にかけて、明治大学を象徴する建物として多くの学生や卒業生に親しまれました。重要文化財への指定も検討されましたが、維持管理上の課題などから建て替えられることになりました。現在、その記憶はリバティタワーに受け継がれています。記念館のドーム屋根のデザインはリバティタワーにも反映され、正面玄関を飾っていたレリーフとステンドグラスは、タワー23階の岸本辰雄ホールに移設され、今も当時の面影を伝えています。

3代目記念館は、入学式・卒業式をはじめ、創立記念式典（昭和天皇が臨席された70周年記念式典を含む）、明治大学女子部の開校式、学徒出陣壮行式、全学連大会、鵜澤總明総長の大学葬など、大学の歴史における数々の重要な儀式や集会の舞台となりました。

2024年放送のNHK連続テレビ小説『虎に翼』では、茨城県つくばみらい市のワープステーション江戸に作られたセットで、この記念館を模した建物が再現され、改めて注目を集めました。記念館は、その度重なる災難と復興、そして大学の発展を見守り続けた、まさに明大の歴史そのものを体現する存在でした。

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