明詮

明詮について

明詮（みょうせん、789年 - 868年）は、平安時代初期に活躍した元興寺の僧であり、彼の人生は非常に波乱万丈なものでした。彼は大原桜井の孫で、右京に生まれ育ちました。

生い立ちと出家

明詮は、若くして父・大原石本を失い、母親・橘氏の元で愛情深く育てられました。しかし、彼が15歳の時に母親も亡くなってしまいます。この悲劇を受け、明詮は世俗を離れ、出家することを決意しました。出家は自らの人生の中で、無上の帰無であると考えたからです。

最初は元興寺の施厳より法華経と最勝王経を学びましたが、施厳からは「あなたの器は弘遠であり、私の及ぶところでない」と評され、その後、明詮は同寺の仲継に委ねられました。仲継は明詮の才能を「法門の領袖」と称賛し、彼を高く評価しました。弘仁10年（819年）には正式に受戒しています。

学問と活動

承和14年（847年）、明詮は大極殿にて円珍と法論を展開し、その才覚を示しました。円珍は「法相の猛虎」と表現され、明詮もその論理の脅威に感嘆したとされます。さらに、嘉祥3年（850年）には法相宗の代表として仁明天皇を前に法華経を講じ、その名声は高まりました。明詮の言葉は的確で、聴衆を圧倒させるものだったと伝えられています。

晩年と入滅

貞観10年（868年）、明詮は弟子の賢応の死を受けて病に倒れました。彼は音石山に帰り、5月16日、80歳で息を引き取りました。亡くなる前日、弟子たちと共に懺悔の法を行い、夜通し弥勒の宝号を唱えていました。最後の瞬間まで、彼は弟子たちとの別れを惜しむ姿勢を崩さず、朝が明けて、静かにこの世を去りました。

逸話とその影響

明詮にまつわる逸話も多く、特に仁明天皇からの信任を受けた際のエピソードが有名です。悪僧たちからの嫉妬に遭った際も、明詮は冷静さを失わず、弟子たちが恐れる中で自らの信念を貫き通しました。また、彼は夢の中で見る弥勒像を元に、元興寺の南に玉華院を建立。悪僧たちの攻撃を受けてもその信念を貫いたことから、多くの人々に感銘を与えました。

若き日には、自身の成長を求め、雨滴によって石が穿たれる様子を観察し、それを励みにして学び続けたことも広く知られています。このエピソードは「雨垂れ石を穿つ」ということわざの由来ともなりました。

伝記と歴史的評価

明詮の生涯は、宗性の『日本高僧伝要文抄』や虎関師錬の『元亨釈書』等に記録されています。彼の堅い信念と教えは、後の世の僧侶たちにとっても重要な指導原則となりました。彼が残した教えや言葉は、今なお多くの人々に感銘を与え続けています。

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