易幟

易幟（えきし）とは

易幟という言葉は、1928年6月4日に発生した張作霖の爆殺事件に由来します。この事件を契機に、父の後を継いだ張学良が奉天派を指導し、北洋政府の五色旗から蔣介石が率いる国民政府の青天白日満地紅旗に旗を換え、国民政府に降伏した出来事です。この一連の出来事が「易幟」と呼ばれています。

1928年12月29日、国民政府は張学良が旗を換えたことを正式に受け入れました。これにより、蔣介石の北伐が完結し、中国国民党が形式上、中国を統一したと見なされることとなりました。特に、張学良が治める東三省（奉天、吉林、黒竜江の三省）が一斉に青天白日旗を掲げたため、「東三省易幟」とも称されることがあります。

背景

張作霖の急死は、張学良にとって大きな転機でした。彼は地元を取りまとめ、父の地位を引き継ぐために迅速に瀋陽へと戻りました。7月1日には国民革命軍に対して停戦を宣言し、蔣介石による北伐に干渉しない方針を打ち出しました。この動きには背景があり、満洲で勢力を持っていた日本は、張学良の行動に対して懸念を抱いていました。そこで、当時の首相である田中義一は、小役人の林権助を派遣し、張学良に対して方針を変えるよう要求しましたが、彼はその要求を拒否しました。

国民政府との関係

1928年7月3日、蔣介石が北京に到着し、張学良と国民革命軍の代表者との会談が行われました。この会談は、中国における日米の影響力の争いを浮き彫りにしています。アメリカは、蔣介石の北伐を支持しており、これによって日本は外交的に対立する状況に追い込まれました。その結果、国民政府は満洲における全ての旗が青天白日旗に換わったことを宣言し、満洲地域における支配権が国民政府に移行したことを認めました。その後、国民政府は张学良を中国陸軍の司令官に任命することを約束しました。

形式的な統一

ただし、この易幟によって中国が統一されたといっても、これはあくまでも形式的なものに過ぎなかったと考えられています。国民政府自体は、実質的には中国国民党の意思に基づくものではなく、閻錫山、馮玉祥、李宗仁などの地元軍閥が統合された程度の勢力であると言えるからです。さらに、後に中国大陸を掌握することになる毛沢東の指導する中国共産党は、各地で独立した解放区を構築していましたし、張学良が支配する満洲地域も一種の地方政権として独立性を保っていました。このため、国民政府による統一は形の上でのものとされ、実質的な統一の実現は後の大きな課題となったのです。

易幟を通じて、中国の近現代史における権力の変遷と地域間の力関係を理解することが可能です。

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