昔々亭桃太郎

昔々亭 桃太郎について

昔々亭桃太郎は、落語界の中で特に知られる名跡であり、当代は三代目の柳澤尚心である。桃太郎の歴史は複雑で、先代の山下喜久雄は自らを二十四代目と称していたが、実際には23人の桃太郎が存在した記録はない。そのため、専門書『古今東西落語家事典』では、彼の桃太郎は五代目か六代目の位置付けとされている。

歴代の桃太郎

昔々亭桃太郎の名跡を受け継いだ落語家たちには次のような人物がいる。初代は立花家千橘、そして二代目は桃川如燕、さらに橘家花喬も名を変えてこの名跡を持っていた。現代の三代目である柳澤尚心は、この名跡が持つ伝統を受け継ぎながら新たなスタイルで活動を続けている。

二十四代目 昔々亭 桃太郎の経歴

二十四代目の昔々亭桃太郎は、1910年1月2日に生まれた本名・山下喜久雄で、東京を拠点として落語の道を歩んだ。彼の出囃子には『旧桃太郎』が使われていた。桃太郎は、兄に三遊亭金時や柳家金語楼を持ち、江戸落語の中で一定の地位を築いた。

彼の若い頃は、学校を卒業した後、奉公に出たが長続きせず、1926年に兄の影響で落語に興味を持ち始めた。四代目蝶花楼馬楽に入門し、柳家小楼を名乗ってキャリアの第一歩を踏み出した。1927年には柳家小ぎくに改名し、さらなる成長を遂げた。

1932年3月には真打ちとして昇進し、昔々亭桃太郎と改名。彼の独特なスタイルで新作落語を「モダン笑話」として披露し、戦地慰問などでも活躍した。特に当時の首相である東條英機のファンでもあり、首相官邸での演じる機会も得るなど、時代の名士として知られていた。

戦争の影響と晩年

しかし、1943年に召集され満州に赴き、終戦後にはシベリアに抑留されるなど、波乱の人生を送ることになった。復員後、1952年に日本芸術協会に加入したが、人気は他の落語家に移っていたため、その存在感は薄れてしまった。晩年には家族と疎遠になり、千葉県松戸市で愛人に看取られながら生活を送った。

1970年11月5日、急性壊疽性胆嚢炎により60歳でこの世を去った。彼の墓所は兄と同様、品川本立寺にある。戒名は「笑覚院昔桃日喜信士」とされ、彼の落語家としての実績を記録として残した。

落語と芸歴

二十四代目桃太郎は、落語において『お好み床』や『音楽風呂』、さらには『俳句修行』などを得意とし、百田芦生名義で新作や改作にも挑戦した。彼の主な作品には、『ジャズ風呂』『落語学校』、および上方落語の『阿弥陀池』を改作した『新聞記事』などがあった。

弟子には、桃乃はな代や昔々亭桃輔（今丸の父）もおり、落語界に独自の足跡を残した。彼の著書には『かくし芸のすすめ』があり、落語を通じて表現の幅を広げたことが伺える。また、桃太郎の影響を受けた後継者も数多く、今もなお彼の名は多くの落語ファンに語り継がれている。

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