星の国から孫ふたり

『星の国から孫ふたり〜「自閉症」児の贈りもの〜』は、ノンフィクション作家・門野晴子の著作『星の国から孫ふたり バークレーで育つ「自閉症」児』を原作とした、2009年公開の日本映画です。原作がアメリカ・バークレーでの体験を描いているのに対し、本作は舞台を日本の現状に置き換え、自閉症（作中ではオーディズムとも表現）と診断された幼い孫たちと向き合う家族の姿を、祖母の視点を通して丁寧に描いています。監督は槙坪夛鶴子が務めました。

物語の中心となるのは、作家である太田弓子（馬渕晴子）とその家族です。アメリカ・バークレーから帰国した娘の陽子（加藤忍）、その夫の敏夫（比留間由哲）、そして３歳になる孫のかおると、弓子は久しぶりの再会を果たします。しかし、孫のかおるは年齢相応の言葉を発せず、またおむつも取れていないなど、発達の遅れが見られます。医師の診察の結果、「自閉症の疑いがある」と診断されたことから、家族の中に波紋が広がります。特に仕事一筋の敏夫は、陽子の育児方法に問題があるのではないかと妻を責め立てます。

一方、祖母である弓子は、孫の「自閉症」という特性を興味深いものと捉え、日々のかおるの成長を温かく見守ります。そんな折、バークレーで発達障害の専門家として活動する村井ひとみ（乾貴美子）が訪れます。ひとみは、アメリカにおける自閉症児への早期発見・早期療育に向けた積極的な取り組みが、多くの人々の努力によって勝ち取られてきたものであると語り、弓子たちに新たな視点をもたらします。また、弓子の息子である拓也（ミョンジュ）も、ひとみとオンラインで交流しながら、自閉症をはじめとする発達障害について専門的に学び始めます。

しかし、家族に更なる試練が訪れます。妹のらんもまた、自閉症であると診断されてしまうのです。再び動揺する家族でしたが、やがてらんは幼稚園へ、かおるは小学校の特別支援学級へと通い始めます。特別支援学級で、かおるは母親を亡くして心を閉ざしている少女マリアと出会います。かおるが、時に「自分本位」と見られがちな自閉症の特性を持ちながらも、マリアを深く思いやり、そのために涙を流した姿を見た家族は、驚きと共に大きな喜びを感じます。これはかおるにとっての「初恋」ではないかと、陽子たちは彼の心の成長を温かく見守ります。

この出来事を経て、弓子たちは、かおるとらんのこと、そして自閉症について、より多くの人々に理解してもらうことの重要性を強く感じます。家族は、地域社会における自閉症児とその家族への支援の輪を広げるため、積極的に街に出て啓発活動を行うことを決意します。

本作は、自閉症という障害を特別なものとしてではなく、子どもの個性の一つとして受け止め、前向きに寄り添おうとする祖母と家族の姿を通して、障害を持つ子どもたちへの理解と共生のメッセージを伝えます。主要キャストには、祖母役の馬渕晴子をはじめ、加藤忍、比留間由哲らが名を連ねています。また、八百屋のおじさん役で出演した小林桂樹にとっては、2010年の逝去前に出演した最後の作品となりました。映画の制作にあたっては、明星大学の星山麻木教授や東京都立梅ヶ丘病院の市川宏伸院長が監修を務め、専門的な視点からのサポートが行われています。本作はあいち国際女性映画祭2009でプレミア上映されたほか、文部科学省選定作品にも選ばれるなど、高い評価を得ました。文化芸術振興費補助金の助成も受けています。

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