映画女優 (1987年の映画)

映画『映画女優』

1987年1月17日に公開された日本映画『映画女優』は、文化庁の優秀映画に選ばれ、吉永小百合の99本記念映画としても知られています。本作は、新藤兼人の小説『小説 田中絹代』を原作に、田中絹代の生涯を描いています。監督は市川崑で、製作は東宝映画が手掛け、配給も同社によります。

あらすじ

物語は、大正14年に遡ります。主人公の田中絹代は、蒲田撮影所で大部屋女優としての道を歩み始めました。家族は彼女の夢を支えるため、関西から上京し、彼女の芸名も長兄の希望を受けて本名をつけられました。当時の大部屋における給料は、わずか10円から15円といったものでしたが、絹代は30円の給与を得て、監督清光宏からの強い支持も受けます。しかし、同僚たちの嫉妬を招くこととなり、彼女の才能は一部の者からは疎まれることもありました。

絹代のキャリアは急速に進展し、五生平之助監督によって『恥しい夢』の主役に抜擢されますが、清光とのロマンティックな関係が絡む中、彼女は同棲を始めます。しかし、清光の暴力に耐えられず、絹代は一生結婚しないと決意します。

その後、小津安二郎監督による作品やトーキー映画『マダムと女房』、そして『伊豆の踊子』などに出演し、次々と成功を収めていきます。野球選手とのロマンスもあったものの、家庭での複雑な事情が彼女の心に重くのしかかります。姉の駆け落ちや母の死が彼女を打ちのめしますが、絹代は『愛染かつら』の大ヒットにより再び立ち上がります。

その後、彼女は映画『浪花女』の撮影に向かうこととなりますが、制作過程で監督との意見対立が生じます。絹代は役者としてのプライドを持ち、その強い意志で監督に対抗します。二人の関係は最初は衝突を繰り返しますが、次第に互いを認め合うようになります。

戻ってきた秋、絹代と溝内監督は新たな作品への挑戦を迫られる中、絹代は自分の役者としての限界に挑む姿勢を持ち続けます。彼女は「心中しよう」と語りかけるシーンが印象的で、見どころの一つとなるでしょう。

キャスト

本作のキャストには、吉永小百合が田中絹代を演じ、そのほかにも森光子、横山道代、石坂浩二など、多彩な俳優陣が揃っています。特に、吉永小百合と森光子の共演は、本作が彼女たちにとっての重要な作品となっていることを示しています。

制作背景

『映画女優』は、当初「女優・日本映画史」という仮題で企画されていました。その後、田中絹代の伝記映画としての形になり、見ごたえのある作品として昇華していったのです。監督市川崑は原作者・新藤兼人との信頼を築き、脚本を合作しながら進行しました。

受賞歴

本作は、キネマ旬報ベストテン第5位や毎日映画コンクール撮影賞を受賞し、さらにブルーリボン賞ベストテンに入選するなど、多くの賞にノミネートされています。特に、村木忍が手掛けた美術は高く評価され、日本アカデミー賞最優秀美術賞も受賞しました。

『映画女優』は、女優としての苦悩と栄耀栄華を映し出し、日本映画史の一端を担う重要な作品として語り継がれています。

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