浪花女

『浪花女』（なにわおんな）は、1940年に公開された溝口健二監督による日本の映画作品です。この作品は、前作『残菊物語』(1939年)に続く「芸道映画」の二作目として制作されました。

映画の物語は、文楽義太夫節三味線方である二世豊澤團平とその妻・加古千賀夫妻による「壺坂霊験記」の制作秘話をモデルにしています。この夫婦の情熱と葛藤が、映画の中でどのように描かれているのかが、見どころの一つです。

残念ながら、この映画のネガフィルムやプリントは現存しておらず、スチル写真と脚本のみが現存しています。しかし、その芸術的価値は失われておらず、2021年には鎌倉市・川喜多映画記念館の田中絹代特別展において、現存する資料を基にしたパネル形式での再現が試みられました。これは、失われた映画の魅力を現代に伝える貴重な試みと言えるでしょう。

物語のあらすじは、裕福な家庭に育った千賀が、貧しい三味線奏者の豊沢団平と結婚することから始まります。千賀は結婚後、義太夫の世界に深くのめり込むようになり、ついには人形浄瑠璃「壺坂霊験記」を書き上げるまでになります。この物語は、夫婦の愛と、それぞれの芸に対する情熱を描いたものと言えるでしょう。

映画の制作には、以下のスタッフが携わりました。

監督: 溝口健二
脚本: 依田義賢
原作: 溝口健二、依田義賢
撮影: 三木滋人
美術: 水谷浩
音楽: 伊藤宣二
総指揮: 白井信太郎


また、出演者と役名は以下の通りです。

田中絹代: お千賀
坂東好太郎: 豊沢団平
高田浩吉: 文吉
川浪良太郎: 春子太夫改め大隈太夫
中村芳子: おくに
浅香新八郎: 越路太夫
梅村蓉子: その妻・おたか
志賀靖郎: 佳太夫
坪井哲: 萬鳳


この映画は、1940年度の第17回キネマ旬報賞において、日本映画ベスト・テンの第4位に選ばれるなど、高い評価を受けています。

『浪花女』は、文楽の世界を舞台に、夫婦の絆と芸への情熱を描いた作品として、その名を知られています。現存する資料は少ないですが、その芸術性は色褪せることなく、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

関連情報

浄瑠璃：日本の伝統的な語り物音楽の一つで、人形浄瑠璃や歌舞伎の伴奏音楽として知られています。
文楽: 人形浄瑠璃のことで、太夫（語り手）、三味線弾き、人形遣いの三者が一体となって物語を演じます。

外部リンク

浪花女 - allcinema
浪花女 - 日本映画データベース
浪花女 - KINENOTE
Naniwa onna - IMDb（英語）
浪花女 - 文化庁日本映画情報システム
浪花女 - 松竹
* 浪花女 - コトバンク

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