春の予感 -I've been mellow-

「春の予感 ‐I've been mellow‐」は、歌手・南沙織さんが通算25枚目のシングルとして、1978年1月21日にCBS・ソニーから発売されました。この楽曲は、同年の資生堂春のキャンペーンに採用され、広く知られることとなります。

楽曲の制作背景と特徴

本作は、シンガーソングライターとして活躍する尾崎亜美さんが、他のアーティストに初めて楽曲を提供した記念すべき作品です。特に注目されるのは、作詞、作曲、編曲のすべてを尾崎氏自身が手掛けている点です。これは、南沙織さんの全シングルA面曲を見ても、この「春の予感 ‐I've been mellow‐」だけという非常に珍しいケースでした。尾崎氏は本作の作詞によって、東京音楽祭でゴールデンカナリー賞を受賞しています。

また、楽曲のサブタイトルである「I've been mellow」は、1975年に世界的なヒットとなったオリビア・ニュートン＝ジョンの楽曲「そよ風の誘惑」の原題「Have you never been mellow?」への返答のように聞こえる点も興味深い要素です。

南さん自身の解説によると、レコーディングは非常に厳格に行われたといい、特に南さん特有の歌い癖「沙織節」が出ないようにディレクションされたそうです。歌詞の中に登場する「ワイン」という言葉について、尾崎氏が後にNHKの番組で明かしたところでは、楽曲制作時に感じた南沙織さんの透明感からこのイメージが浮かんだといいます。

映像作品と多様な展開

この楽曲にはミュージックビデオも制作されており、1984年発売のPV集『Hello! Cynthia』に収録されています。ただし、映像はフルコーラスではなく、完全な形での現存は確認されていません。

「春の予感」は、様々なコンピレーションアルバムにも収められています。例えば、資生堂のCMソングを集めた『音椿 〜The greatest hits of SHISEIDO〜 赤盤』や、春をテーマにしたアルバム『春の桜と優雅に語らう17の知恵』、『春歌』などに収録されています。さらに、1990年代にはDDI（現KDDI）のCMソングとしても使用されるなど、発表から時を経てもメディアで活用されました。

受容と影響

本楽曲は、その後の文化作品でも使用されています。2006年に公開された日本映画『虹の女神』では、ヒロインが生まれた頃のヒット曲として劇中で流れ、映画のサウンドトラック盤にも収録されました。また、2008年から放送されたNHK連続テレビ小説『だんだん』では、各週のサブタイトルが往年の歌謡曲から引用される構成となっており、ある週のタイトルにこの「春の予感」が採用されています。

収録曲と関連作品

シングルには、A面の「春の予感 ‐I've been mellow‐」のほか、B面曲として「もどかしい夢」が収録されています。どちらの楽曲も作詞・作曲・編曲は尾崎亜美氏が手掛けています。

南沙織さんのオリジナルアルバム以外にも、多数のベストアルバムやコンピレーション盤に収録されており、ライブ音源も存在します。

他のアーティストによるカバーも生まれています。「春の予感」は香坂みゆきさんが、「もどかしい夢」は浅野ゆう子さんがそれぞれアルバムでカバーしました。また、尾崎亜美氏自身も、アルバム『STOP MOTION』などで両曲をセルフカバーしています。

発表から40年以上が経過しても、「春の予感 ‐I've been mellow‐」はその透明感あふれるメロディと歌詞で、多くの人々に春の訪れを感じさせる名曲として記憶されています。

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