春藤真三

春藤 真三（しゅんどう しんぞう、1892年9月13日 - 1964年10月29日）は、日本の都市計画および土木技術の分野で重要な足跡を残した人物。大分県に生まれ、激動の時代における日本の都市づくりの最前線で活躍した。

経歴

第一高等学校を卒業後、1918年に東京帝国大学工科大学土木工学科を卒業。東京帝大では、後に同じく都市計画の分野で活躍する青木楠男や石川栄耀らと同級であった。卒業後は民間企業に勤務し、その後は自身の工務所を運営した。1923年の関東大震災発生を契機に、帝都復興に携わることになり、帝都復興院の技師に任じられ、ここでは土木部道路課に勤務した。

その後、勉学を続け、1925年には東京帝国大学法学部政治学科も卒業している。これは、技術者でありながら都市計画には法律や行政の知識が不可欠であることを認識していたためであろう。1927年には欧米へ視察に赴き、海外の都市計画や土木技術に関する知見を深めた。

帰国後、1928年に内務省復興局の長官官房計画課に配属された。さらに、1929年から1938年にかけては、地方自治体での行政経験を積んだ。神奈川県の土木部道路課長を皮切りに、富山県、栃木県、岐阜県では上水課長を務めるなど、幅広い分野で手腕を発揮した。

1938年には内務省計画局へ転任し、1939年には同計画局の第一技術課長に就任した。特に栃木県在任中、火災で焼失した県庁舎の再建を遺漏なく進めたことが高く評価された。当時、栃木県知事で後に内務省計画局長となった松村光磨は、その功績を認め、当時の計画局長であった松村自身が、榧木寛之の後任として春藤を内務省計画局へ招聘したと伝えられている。また、後に神奈川県の都市計画課長となった野坂相如の就任にも、内務省技術第一課長時代の春藤が関与したとされる。

準戦時下の困難と戦後復興

しかし、彼が第一技術課長を務めた時期は、まさに準戦時体制下であり、一般の都市計画事業は大幅な縮小を余儀なくされた。この時期に力が注がれたのは、橿原や宇治山田における神都計画事業、全国数カ所の新興工業都市建設、そして防空施設の整備などであった。しかし、これらの事業も、資源や資材が戦力増強に直結する分野に優先的に回されたため、都市計画にとっては極めて困難な状況が続いた。特に神都計画のような国家的な直轄事業でさえ、予算などで特別な配慮はあったものの、その遂行は容易ではなかったと記録されている。

1941年からは帝都高速度交通営団の設立に伴い参与に就任し、戦時下の都市交通計画にも関わったが、1945年に営団を退職した。

終戦後、焦土と化した日本の復興が喫緊の課題となる中、1946年に熊本市復興局長に就任し、同市の戦災復興に多大な尽力をした。都市の骨格を再建するための計画策定と事業推進を指揮し、市民生活の基盤回復に貢献したが、1950年に同職を辞した。

その後の活動と功績

熊本市復興局長を辞した後も、春藤は精力的に都市計画分野での活動を続けた。各地（宇都宮市、青森市、鎌倉市、高松市、藤沢市など）の都市計画事業にも深く関与し、その推進に貢献した。地方の都市が抱えるそれぞれの課題に対し、豊富な経験に基づいた計画策定や助言を行った。

日本の都市計画の発展に不可欠な存在として、1959年には日本都市計画学会の会長に就任し、学会活動を通じて後進の指導や研究の振興に努めた。1961年には同学会の名誉会員となった。その他にも、首都圏整備委員会の専門委員や、神奈川都市計画審議会の委員などを歴任し、都市計画行政全般にわたる政策決定に関わった。

また、溝口三郎や北村徳太郎といった錚々たるメンバーと共に、全国市長会の専門調査員を務め、多数の都市における開発計画の立案指導にあたるなど、全国規模での都市づくりにも貢献した。

人物と晩年

晩年は胆石や肺気腫を患ったが、日本の都市計画分野における長年の功績は大きく、1964年10月29日に72歳でその生涯を閉じた。

彼の功績の一つとして、1930年には帝都復興記念章を受章している。

家族としては、父は春藤修（大分県県属）、兄は春藤和（三菱銀行常務などを歴任した実業家）がいた。妻は島田富恵で、熊本の島田恒信（島田美術館設立者・島田真富のおじ）の三女であった。

春藤真三は、関東大震災後の復興から戦災復興、そして高度経済成長期前の地方都市計画に至るまで、日本の近代都市計画史において、行政官として、また指導者として、その専門知識と経験をもって多大な貢献をした技術者であったと言える。

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