時局匡救事業

時局匡救事業

時局匡救事業（じきょくきょうきゅうじぎょう）は、1932年から1934年の日本で行われた公共事業の一環であり、景気回復を目指して実施されました。この政策は、当時の厳しい経済状況を打破するための重要なステップとなりました。

事業の背景

経済状況が厳しくなったのは1929年のアメリカでの株価大暴落がきっかけでした。これにより、日本の経済も影響を受け、昭和恐慌が発生しました。濱口内閣は金の輸出解禁や緊縮財政政策を行ったものの、工業生産の減少や物価の大幅な下落を招く結果となりました。その後、1931年に満州事変が発生し、軍事支出の増加が求められました。

1932年5月には五・一五事件が起こり、経済的不安が広がる中、齋藤内閣が発足し、その下で時局匡救事業が具体化されていきました。6月に農村救済決議が行われ、以降具体的な事業内容が定められました。

政策の内容

時局匡救事業はアメリカのニューディール政策に似たもので、国家財政からの大量の資金投入が行われました。日本では、軍事費とこの匡救事業の両方を活用し、経済を刺激することが目指されました。事業の運営には、政府公債の発行が用いられ、その資金を日本銀行が支援しました。

具体的な事業内容には、農村の救済や農産物価格の安定を目的とした土木事業が含まれました。初年度には、およそ2億6,300万円が投入され、工事は主に治水、港湾整備、道路整備などの分野で実施されました。これにより、中小商工業者や農漁山村の支援が図られました。

特に、1932年度には陸軍省や海軍省にも予算が割り当てられ、軍事費が経済活動を刺激する形で利用されました。この政策は、全国的な需要の回復をもたらし、鉄鋼やセメントの生産増に寄与しました。

経済効果

この時局匡救事業は、特に1932年から1933年にかけて効果を発揮し、輸出の拡大や雇用の創出を促しました。公共事業の遂行により、多くの労働者が雇用され、地域経済の活性化にもつながりました。特に、陸軍省への予算割り当ては大きな経済効果を期待されたもので、その後の軍事費に移行することとなります。

しかし、1934年には東北地方が冷害に見舞われ、地域経済が厳しい状況に置かれました。賃金支払いが地域の生活を少しでも支えたという testimonies もあるものの、経済全体の問題は解決されませんでした。

時局匡救事業の終了

3年間にわたって続けられたこの事業は、いずれも当初の予定通り完了しましたが、欧米に先駆けてデフレから脱却することができた背景があります。一部の事業は1935年以降も継続されるものの、主だった事業は終了しました。以後、日本の経済は徐々に好転し、高橋是清が進めようとしていた財政の均衡化へと舵を切ることになります。

この時期、日本の経済政策は、軍部の影響を大きく受け、国家主義的な傾向が強まったことが特徴的です。特に、軍事力の背景に基づいた植民地主義的な思考が根強くあり、従前の経済学のアプローチは、次第に影をひそめることとなります。

まとめ

時局匡救事業は、厳しい経済環境の中で施行された政策であり、一定の経済効果をもたらしました。しかし、その後の日本の経済政策の方向性は、軍事的側面に強く影響されることになり、時代の流れとともに変化していくことになります。

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