晩秋 (戯曲)

晩秋（ばんしゅう）

『晩秋』は、脚本家マキノノゾミが森光子のために書き下ろした舞台劇です。2009年11月に明治座で初演され、老境を迎えた人々、そしてこれから老いを迎える人々の姿を描いた群像劇として、観客の心を深く揺さぶりました。

概要

この舞台は、森光子がマキノノゾミに新作舞台劇の制作を依頼したことから始まりました。森は、共演者として坂東三津五郎と八千草薫を指名し、マキノが彼らに合わせて脚本を書き下ろしました。森と三津五郎の共演はこれが初めてであり、八千草とは1961年の『放浪記』以来、実に48年ぶりの共演となりました。森光子は同年、国民栄誉賞を受賞しており、この舞台は「国民栄誉賞受賞記念特別出演」として上演されました。

劇中では、森光子が英語で「センチメンタル・ジャーニー」を独唱する場面があり、人生の「晩秋」を迎えた人々の心情を豊かに表現しました。物語は、親子愛、師弟愛、友情といった普遍的なテーマに加え、医療過誤や認知症といった現代社会が抱える問題にも深く切り込んでいます。

上演に先立ち、小学館の『せりふの時代』秋号（第53号）に戯曲が掲載され、舞台への期待を高めました。

ストーリー

物語の舞台は、平成11年の都内。大学病院に勤務する医師・鳴海春彦は、病院内で起きた医療過誤の隠蔽問題に苦悩していました。また、交際中の婦長・佐奈子とも意見が対立し、心身ともに疲弊していました。そんな折、小学校時代の恩師である清子から、故郷である瀬戸内海の小さな島・登美島への誘いを受けます。

島へ帰った春彦は、幼馴染たちと再会し、懐かしいひとときを過ごします。しかし、恩師である清子に認知症の症状が現れていることに気づきます。清子が春彦を島に呼んだのは、自分の記憶がまだ鮮明なうちに、春彦に父・勝彦と母・志津子に関するある重要なことを伝えたかったからでした。

島での出会いと出来事を通して、春彦は自身の過去と向き合い、新たな一歩を踏み出していくことになります。

キャスト

鳴海春彦（大学病院に勤務する医師）／鳴海勝彦（春彦の父、登美島の医師）：坂東三津五郎（二役）
上原清子（春彦の恩師、旧姓島村）：八千草薫
樋口志津子（春彦の母）：森光子（国民栄誉賞受賞記念特別出演）
鳴海源吉（春彦の祖父、登美島小学校校長）：米倉斉加年
アキ（ナース）：守田菜生
久保武雄（春彦の小学校時代の同級生）：若杉宏二
小野寺三千代（春彦の小学校時代の同級生）：山下裕子
久保サト子（春彦の小学校時代の同級生）：田根楽子
島村清子（小学校の教師）：星野真里
鳴海由佳（春彦の娘）／志津子：馬渕英俚可（二役）
小林医師（大学病院に勤務する医師）：武岡淳一
鈴木佐奈子（大学病院の看護婦長）：中田喜子

スタッフ

作・演出：マキノノゾミ
演出補：郷田拓実
美術：中島正留
音楽：甲斐正人
効果：内藤博司
振付：前田清美
歌唱指導：山口正義
衣装プランナー：三大寺志保美
メイク指導：青木満寿子
方言指導：西村奈歩
プロデューサー：村田章、五十嵐禎
制作：北村純一
製作：明治座

関連項目

医療過誤
* 認知症

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