晩翠草堂

晩翠草堂：詩人土井晩翠の足跡と復興の物語

仙台市青葉区大町に位置する晩翠草堂は、明治から昭和期に活躍した詩人で英文学者であった土井晩翠が晩年を過ごした邸宅です。現在は一般に公開されており、多くの来訪者を受け入れています。

戦災と復興：奇跡のヒイラギモクセイ

土井晩翠は、1905年から1934年まで旧制二高と東北帝国大学（現在の東北大学）で教鞭をとり、その後も仙台で生活を続けました。しかし、1945年の仙台空襲により、住まいと約3万冊に及ぶ蔵書を失うという大きな痛手を受けました。

この悲劇を受け、晩翠の教え子や仙台の有志たちは、旧居跡に新たな住居を建設するという崇高な決意を固めます。1949年、彼らの尽力によって、新たな晩翠草堂が誕生しました。晩翠の死後、この建物は仙台市に寄贈され、一般公開されることとなったのです。

現在、草堂内には晩翠の著書や写真、そして晩翠が愛用していたベッドなどが展示されています。庭には、空襲で焼失したにもかかわらず奇跡的に生き延びたヒイラギモクセイの樹が立っています。晩翠の命日である10月19日頃には、白い花を咲かせ、来訪者を迎えます。このヒイラギモクセイは、復興のシンボルとして、静かにその歴史を物語っています。

「天地有情」と晩翠通りの命名問題

草堂の表通りには、「天地有情」と刻まれた石碑が建っています。これは、晩翠が1899年に発表した第一詩集のタイトルであり、彼の詩作への情熱を象徴しています。

一方で、晩翠草堂にまつわる興味深い出来事として、1980年代に発生した「晩翠通り」の命名問題があります。草堂の近くを通る道路が「晩翠通り」と命名されたことに対し、土井の子孫がパブリシティ権の侵害を訴えるという訴訟に発展しました。この出来事の詳細については、中野好之著『仙台「晩翠草堂」の顛末 詩人・土井晩翠旧宅敷地譲渡をめぐる紛争の内幕』（御茶の水書房、1988年）に詳しい経緯が記されています。

東日本大震災と再開

2011年の東日本大震災では、晩翠草堂も大きな被害を受け、一時休館を余儀なくされました。その後、修復工事が行われ、一部の展示物は仙台市文学館に移設されました。そして、2011年10月8日、修復を終えた晩翠草堂は再び一般公開されることとなりました。

施設情報とアクセス

晩翠草堂は、仙台市営バスや宮城交通バスの「晩翠草堂前」停留所からすぐ、地下鉄東西線青葉通一番町駅から徒歩5分の場所に位置しています。開館時間は9:00～17:00、休館日は月曜日（祝祭日の場合は翌火曜日）と年末年始です。入館は無料です。

周辺には、仙台高等裁判所や藤崎本店、アークホテル仙台青葉通りなどがあり、仙台の中心部に位置しています。

晩翠草堂は、詩人土井晩翠の生涯と、戦災からの復興、そして震災からの再生を象徴する場所です。歴史と自然、そして人々の思いが凝縮されたこの地を訪れ、静かに歴史に思いを馳せることができるでしょう。

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