晴れた日に永遠が見える

1970年にアメリカ合衆国で製作された映画『晴れた日に永遠が見える』（原題：On a Clear Day You Can See Forever）は、夢と現実が交錯するミュージカル・ファンタジー作品です。その根源は、1965年にブロードウェイで初演された同名の舞台作品に遡ります。映画化にあたりメガホンを取ったのは、『巴里のアメリカ人』や『恋の手ほどき』といった名作ミュージカル映画を手がけた巨匠ヴィンセント・ミネリ。主演には、比類なき歌声を持つバーブラ・ストライサンドと、国際的なスターであるイヴ・モンタンが起用されました。

物語の中心となるのは、精神科医のマーク・ブルックナー博士です。催眠療法を用いて人間の心理を深く探求することに情熱を燃やす彼は、ある日、自身の講義に現れた一人の若い女性と出会います。彼女の名はデイジー・ギャンブル。当初、デイジーがブルックナー博士に求めたのは禁煙治療でした。しかし、催眠下に置かれたデイジーの口から語られる言葉は、博士の予想を遥かに超えるものでした。そこには、現代に生きるデイジーとは全く異なる、別の時代を生きた華麗な女性の姿があったのです。彼女の中に存在する驚くべき別人格を発見したブルックナー博士は、その研究に没頭するうちに、単なる被験者としてだけでなく、一人の女性としてデイジーに強く惹かれていきます。しかし、催眠によって呼び覚まされる過去の存在は、やがて現実世界の二人の関係に複雑な影響を与え始めるのです。

本作は、その原作となった舞台版と比較して、特に物語の終盤において顕著な違いが見られます。舞台版が持つテーマや構造を踏襲しつつも、映画独自の解釈や展開が加えられており、エンディングも舞台版とは異なったものとなっています。これにより、映画版は単なる舞台の映像化に留まらず、映像表現ならではの魅力を持つ独立した作品として成立しています。

主要なキャストには、主人公デイジー・ギャンブルを演じたバーブラ・ストライサンド、そして精神科医マーク・ブルックナー博士を演じたイヴ・モンタンの他、以下のような俳優たちが名を連ねています。

デイジー・ギャンブル：バーブラ・ストライサンド
マーク・ブルックナー：イヴ・モンタン
ウォーレン・プラット：ラリー・ブライデン
メイソン・ヒューム：ボブ・ニューハート
コンラッド・フラー：サイモン・オークランド
ロバート・テントリー卿：ジョン・リチャードソン
* タッド・プリングル：ジャック・ニコルソン

また、本作を支えたスタッフには、監督のヴィンセント・ミネリをはじめ、プロデューサーのハワード・W・コッチ、脚本のアラン・ジェイ・ラーナー、撮影のハリー・ストラドリング、編集のデビッド・ブレザートン、そして音楽のバートン・レインとネルソン・リドルといった名匠たちが集結しています。彼らの手腕によって、華やかなミュージカルシーンと、時代を超えたロマンスの物語が見事に織り上げられています。

この映画は、催眠療法という科学的なアプローチと、過去生や魂の転生といった神秘的なテーマを組み合わせたユニークな設定が魅力の一つです。バーブラ・ストライサンドの圧倒的な歌唱力と表現力、イヴ・モンタンの落ち着いた魅力、そしてヴィンセント・ミネリによる視覚的に美しい演出が融合し、観る者を不思議な世界へと誘います。また、劇中で歌われる楽曲も素晴らしく、映画の成功に大きく貢献しています。

近年では、日本の宝塚歌劇団雪組によって舞台化されるなど、時代を超えて多くの人々に親しまれている作品です。催眠術によって呼び覚まされる過去の記憶と、それによって現代の男女が織りなす奇妙な関係、そして時代を超えて結ばれる（あるいは結ばれようとする）愛の物語は、観る者に永遠とは何か、そして人間存在の神秘について問いかけます。美しい映像と音楽と共に、時間を忘れて楽しめる一作と言えるでしょう。

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