暴支膺懲

暴支膺懲（ぼうしようちょう）

『暴支膺懲』とは、支那事変と呼ばれる日中戦争の過程で使用された日本のスローガンであり、主に日本陸軍省などが提唱しました。この言葉は中国の蔣介石政権に対する軍事的行動を指し、抗日運動に対する抑制を図る意味を持っていました。『暴支膺懲』は「暴戻支那ヲ膺懲ス」の略語で、「横暴な中国を懲らしめよ」という意味を持つフレーズです。

歴史的背景

このスローガンは、1937年7月7日に発生した盧溝橋事件から頻繁に使用されるようになりました。同年には通州事件も発生しており、これにより国民の戦意を高める目的で多数の「暴支膺懲国民大会」が開催されました。特に、この大会は日本革新党や対支同志会といったさまざまな政治団体や地域団体によって組織され、政治家や有力者が公の場でスピーチを行いました。

例えば、1937年7月21日に開催された日比谷公会堂での大会や、9月2日に芝公園で行われた対支同志会主催の大会では、「共匪追討」や「抗日絶滅」といったキャッチフレーズが取り上げられ、戦争に対する士気を高める役割を果たしました。

また、日米英との戦争に突入後、大本営はこのスローガンに「鬼畜米英」を加え、「鬼畜米英、暴支膺懲」という形でより強調しました。これにより、日本国民は敵である米英に対する感情とともに中国に対する攻撃的な意識を持たされました。

戦後の変遷

第二次世界大戦後、中国共産党が国内の権力を掌握したことにより、『暴支膺懲』の語は新たな意味合いを持つようになりました。具体的には、反中共運動における象徴的なキャッチフレーズとして利用されることが増えました。その背景には、中国国内の政治情勢に関連する視点が存在しています。

文化的影響

『暴支膺懲』は、日本における国家意識や戦争の記憶に深く根付いています。戦前・戦中の日本人にとっては興奮や士気を高めるためのスローガンでありましたが、戦後には国際情勢や外交における複雑な問題を反映するフレーズとしても機能しています。こうした背景から、『暴支膺懲』は単なる歴史的なスローガン以上のものとして、日本社会における規範や感情にも影響を与えてきました。

関連項目

この用語に関連する議題としては、反中、嫌中、中国脅威論、脱亜論、脱亜入欧、そしてマスメディアの戦争責任などが挙げられ、これらの要素は日本と中国との歴史的な関係を考察する上で重要な視点を提供します。また、現代においても国際関係や歴史認識の観点から議論が続いており、歴史の中での言葉の意味や影響を再評価する必要性が感じられるところです。

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