曲水の宴

曲水の宴（きょくすいのうたげ）

曲水の宴は、流れる水のそばで行われる、詩歌を詠む伝統的な宴のことです。この行事では、出席者が水辺に座り、流れてくる盃を受け取る間に詩を詠み、詠み終えたら酒を飲み、そのまま盃を次の人に流していきます。また、この場で詠まれた詩は別の場所で披露されるという特徴があります。

この行事は「流觴」や略して「曲水」などとも呼ばれ、古代からの儀式として多くの場面で行われてきましたが、実際にはさまざまな地域で異なる形で存在しています。特に中国の風習が起源となっており、平安時代には日本に伝わったとされています。現在でも多くの地域で復活し、年中行事として定着しています。

起源と歴史

中国での起源

曲水の宴の起源は中国の古代にさかのぼります。特に古い時代から、毎年3月3日に水辺で禊を行い、流れる盃を使って宴を開く風習がありました。この慣習は周公の時代や秦の昭襄王の時代に始まったとも伝えられています。

東晋の永和9年（353年）、書聖として知られる王羲之が蘭亭で曲水の宴を催し、その際には『蘭亭序』という著名な序文も残りました。このように、曲水の宴は文学を背景に持ちながら、時代を超えて受け継がれてきました。

日本における展開

日本では、顕宗天皇元年（485年）3月に宮廷の儀式として初めて行われた記録があります。ただし、その後の記録は文武天皇5年（701年）まで途絶え、行事の継続については不明です。しかし、楽曲は中国の影響を強く受けており、奈良時代にはすでに定着していたと考えられています。

平安時代になると、曲水の宴は宮廷や貴族の邸宅でも行われるようになりました。摂関時代には内裏の公式行事として定期的に行われており、多くの文人や貴族が詩を通じて交流を深めました。

朝鮮における曲水の宴

古代朝鮮でも曲水の宴のような行事が存在していたとされます。しかし、李氏朝鮮の時代にはその記録が残っていないため、かなりの昔に廃れたと推測されています。慶州市にある鮑石亭は、流觴曲水宴が行われた場所として有名です。

現在の曲水の宴

今日、行われている曲水の宴は、古き良き昔の伝統を復元し、また新たに始められたものが多く存在します。

• - 太宰府天満宮（福岡県）: 1963年に再興され、毎年恒例の行事となっています。
• - 賀茂別雷神社（京都府）: 一度中断された後、1994年に復活。
• - 毛越寺（岩手県）: 1986年から行われるようになりました。
• - 仙巌園（鹿児島県）: 1992年から始まった曲水の宴。

各地でさまざまな日程に合わせて開催されており、上記のように特定の日にちで行われる行事は多様性を持ちながら、古代の風習が生き続けています。

主要な開催日

• - 3月第1日曜日: 太宰府天満宮
• - 4月第1日曜日: 仙巌園
• - 11月3日: 城南宮

曲水の宴は、詩を詠むことで交流し、楽しむという文化的な行事であり、人々の共同体意識を育む重要なイベントとなっています。

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