書物改役

書物改役（しょもつあらためやく）

書物改役とは、江戸時代に長崎に設けられた、中国などから輸入される漢籍などの書籍を調査した江戸幕府の役職です。役職は長崎奉行の支配下に置かれていました。

概要

書物改役は、1630年（寛永7年）にキリスト教関連の書籍が国内に流入するのを防ぐ目的で設置され、当初は長崎の春徳寺の住職がその任にあたっていました。1639年（寛永16年）には、本草学者の向井元升が江戸城の紅葉山文庫に所蔵する漢籍を選定するために、書物改役に加えられました。

1680年（延宝8年）には、元升の遺児である儒学者の向井元成が書物改役に加えられます。1685年（貞享2年）、元成は『寰有詮』という漢訳の天文学書の中にキリスト教の教義に触れた部分があることを幕府に告発しました。この功績により、元成は長崎奉行直属に取り立てられ、その子孫が書物改役を世襲することとなりました。以後、書物改役は向井家が代々務めることになります。

1693年（元禄6年）以降、中国船が持ち込んだ漢籍の内容に関する報告書である「大意書」を長崎奉行に提出するようになりました。1715年（正徳5年）に海舶互市新例が実施されると、信牌や配銅証文などの書役（作成・記録の担当官）も担当しました。

「大意書」は長崎奉行から老中に送付され、書籍の販売許可や、紅葉山文庫をはじめとする幕府機関の書籍蒐集の参考資料として利用されました。また、向井家は業務上の記録を詳細に残していたため、同家の記録が様々な書目作成や近藤正斎の書誌研究にも用いられています。これらの記録は、当時の書籍流通や幕府の政策を知る上で貴重な資料となっています。

参考文献

大庭脩「書物改役」（『国史大辞典 7』吉川弘文館、1986年）ISBN 978-4-642-00507-4
大庭脩「書物改役」（『日本史大事典 3』平凡社、1993年）ISBN 978-4-582-13103-1
* 高橋裕史「書物改役」（『日本歴史大事典 2』小学館、2000年）ISBN 978-4-095-23002-3

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