信牌

信牌（しんぱい）についての詳説

信牌とは、中国船が長崎に入港するために必要な許可証であり、その発行は海舶互市新例によって義務付けられていました。この制度は、1715年に新井白石が制定したものであり、日本の鎖国政策のもと、貿易量を制限する目的がありました。

背景

18世紀初め、日本は鎖国状態にありましたが、オランダと清国との間でのみ長崎での貿易が許可されていました。この時期、日本からの輸出は少なく、逆に外国からの輸入品に対しては大量の金銀を支払う必要がありました。このため、貿易赤字が拡大し、経済的な懸念が高まっていました。

この状況を受けて、新井白石は貿易の規模を抑制するために海舶互市新例を制定しました。これにより、中国船の長崎への来航は年間30隻に制限され、それに加えて、来航する船舶は新令に従い、その従事者が誓約を行った場合にのみ信牌が発行されることとなりました。信牌を持つ中国船のみが貿易を行えるようにして、管理体制を整えたのです。

信牌は実際には江戸幕府が管理していましたが、形式上は唐通事が発行することになっていました。この措置は清国の反発を避けるためのもので、中国では信牌が朝貢国に対して呈される伝統がありました。そのため、信牌の発行が朝貢を意味するのではないかと懸念されていたのです。

実際には、信牌を得られなかった中国商人が信牌を持つ商人を清朝に対しての反逆者として訴える事例が発生しました。この事態を受けて清朝政府は信牌の没収を行い、貿易は一時停滞しました。新井白石は、この事態を見越して信牌は幕府が交付したものではなく、日本の服属を表すものではないと抗議を行い、最終的には清も1717年にはこの立場を受け入れました。

オランダの船舶に関しては、年に2隻と定められていましたが、日蘭貿易はオランダ東インド会社の独占であったため、信牌は必要とされませんでした。

ラクスマンと信牌

ロシア帝国の陸軍軍人、アダム・ラクスマンは、日本へ漂流者を送還し、通商を行う計画を立てました。彼は、皇帝エカチェリーナ2世の指示を受け、1792年には根室国に到着しました。ラクスマンは江戸に赴き、漂流者を引き渡すとともに通商交渉を行いたいと考えていましたが、江戸幕府では長崎に回航すべきだとの指示がなされました。

最終的にラクスマンは信牌を交付されましたが、長崎には向かわず帰国しました。12年後の1804年には、ラクスマンが得た信牌を持つニコライ・レザノフが長崎の出島に来航しましたが、当時の老中はすでに失脚しており、交渉は進展しませんでした。1805年には通商の拒絶が正式に告知され、レザノフらは出島に半年間留め置かれる事態となりました。

まとめ

信牌は江戸時代の貿易において重要な役割を果たした制度であり、その背後には経済的な制約や外交上の配慮がありました。日本と中国間の貿易の複雑さを浮き彫りにする一方で、国際関係の展開がどのように影響を及ぼしたかを理解する手助けになるでしょう。

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