曹禺

曹禺（そう ぐう）: 中国の劇作家

曹禺（Cao Yu）は、1910年9月24日に天津で生まれ、本名は万家宝です。彼のペンネーム「曹禺」は、本名の一部を音に合わせて選んだもので、俗に「ソウ・グウ」と呼ばれています。家庭環境は複雑で、特に父親は軍人としてのキャリアはあったものの、不遇な生活を強いられており、その影響が曹禺の創作活動に色濃く反映されています。

教育と初期の活動

1922年には南開中学に入学し、ここで南開新劇団に参加し、演劇への道を歩み始めました。1928年からは南開大学の政治学部で学びましたが、政治や経済に興味を示さず、1930年に清華大学の西洋文学系に編入。文学に対する情熱は、在学中にギリシア悲劇へと向きを変えます。

1934年には彼の代表作『雷雨』を発表し、続いて1936年に『日の出』を掲載。この作品では、高級娼婦・陳白露を通して、都会に生きるさまざまなキャラクターを描いています。特に『日の出』には、「大きな虫が小さな虫を食べる」という現実がテーマとして取り扱われています。

その後、彼は1937年に『原野』を発表。この作品も他の作品同様、セリフベースで進行し、登場人物たちの悲劇的な運命が描かれています。こうした一連の作品は、一貫したテーマとして人間の苦悩と社会の不正に対する鋭い視線を持っています。

抗日戦争とその後

抗日戦争の勃発後、曹禺の作風に変化が見られます。1938年には宋之的と共作した『黒字二十八』、1939年には『蛻変』を発表し、国民の抗日への希望を表現します。しかし1941年の『北京人』においては、再び彼の悲劇的なスタイルが戻ります。1942年には巴金の『家』を脚色し、後の作品へも影響を与えました。

1949年に中華人民共和国が成立すると、曹禺は北京人民芸術劇院の院長や中央戯劇学院の副院長を歴任し、劇作活動を続けます。この時期、彼は以前の作品に対して自己批判を行い、1951年には『雷雨』や『日の出』などの内容を大幅に改訂した『曹禺選集』を発行しますが、1954年には原型に戻すこととなります。さらに、同じ年に発表された『明るい空』は、当時の中華人民共和国の現実を賛美したものでした。

歴史劇とその後の影響

1961年には歴史劇『胆剣篇』、1978年には『王昭君』を発表し、その後は新たな戯曲は発表されませんでした。文化大革命が終わった後は、中国文連の主席など、副交渉役なども務め、文化界における重要な人物として活躍しました。

曹禺の中華民国期の作品『雷雨』、『日の出』、『原野』、『北京人』は、現在でも中国話劇の象徴的な側面を持ち、多くの劇団によって中国国内外で上演されています。彼の作品を通じて、中国の演劇史における重要な位置づけがなされ、今日でも影響力を保ち続けています。

主な日本語訳

• - 中国現代戯曲集・曹禺特集【上】: 『雷雨』（飯塚容訳）、『日の出』（中山文訳） 晩成書房 2009
• - 中国現代戯曲集・曹禺特集【下】: 『原野』（飯塚容訳）、『北京人』（内山鶉訳） 晩成書房 2009

映像化情報

• - 王妃の紋章: 原作『雷雨』（監督：チャン・イーモウ、主演：チョウ・ユンファ、コン・リー、2006年）

この作品は現代小説として描かれていますが、映画の内容は五代十国の後唐の時代に設定されています。

参考文献

• - 瀬戸宏『中国の現代演劇 中国話劇史概況』（東方書店 2018年）

曹禺はその個性的な文体と人間描写によって、今もなお多くの人々に影響を与えている作家です。

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