曾布

曾布（そう ふ）

曾布（1036年 - 1107年）は、北宋末期の政治家であり、曾鞏の異母弟として知られています。字は子宣、諡は文粛。彼の生涯は、王安石の新法を巡る激しい政治闘争と深く結びついていました。

生涯

曾布は13歳で孤児となり、異母兄である曾鞏に育てられました。兄とともに進士となり、その才能を開花させます。その後、王安石の推薦により重用され、政治家としての道を歩み始めました。

王安石が新法を推し進めようとした際、曾布は呂恵卿とともに一貫して賛成の立場を取り、その導入に中心的な役割を果たしました。しかし、熙寧7年（1074年）に市易法の施行方法を巡り王安石・呂恵卿と激しく対立し、新法党内での権力争いに敗れたことで、一時的に地方へ左遷されることになります。

神宗の親政期には中央に復帰し、翰林学士から戸部尚書へと昇進しました。しかし、哲宗の時代に司馬光が新法を全面的に廃止しようとすると、これに反対したため、再び地方に左遷される憂き目にあいます。

哲宗が親政を行い新法が復活すると、曾布は再び中央に呼び戻され、紹聖4年（1097年）には知枢密院事に任ぜられます。章惇・蔡卞らとともに新法再復活の指揮を執りました。章惇の退任後は新法党の中心人物として活躍し、元符3年（1100年）には中書侍郎兼右僕射に任ぜられました。徽宗の初期には、旧法党の韓忠彦とともに政権を担当するなど、旧法党と新法党の中間的な政権を担いました。

しかし、崇寧元年（1102年）に蔡京が徽宗の寵愛を受け政権を掌握すると、曾布は再び地方へ左遷されることになります。さらに、司馬光ら旧法党人士に加えて曾布も「元祐党人」と認定され、政界からの追放運動にまで発展し、失意のうちに病死しました。

評価

曾布の死後、編纂された『宋史』では、彼が長年にわたり国を傾けた「新法党の中心人物の一人」として認定され、「姦臣伝」にその名が記されることになりました。

曾布の生涯は、北宋末期の政治情勢の複雑さと、新法を巡る激しい対立を象徴しています。彼の政治的な決断は、後世に大きな影響を与え、評価が分かれる人物として歴史に名を残しました。

参考文献

河原正博「曾布」（『アジア歴史事典 5』平凡社、1984年）
東一夫『王安石事典』（国書刊行会、1980年） ISBN 978-4-336-01403-0

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