曾我正史

曾我正史（そが まさし）

概要

曾我正史は、1906年（明治39年）3月9日に新潟県で生まれ、1987年（昭和62年）3月4日に生涯を閉じた日本の映画界における重要な人物です。映画プロデューサー、実業家、映画監督、脚本家として多彩な才能を発揮しました。初期には曾我正男の名で活動し、映画監督としては振津嵐峡という別名を用いていました。戦後には、大映の専務取締役や東京第一フィルムの代表取締役などを務め、映画業界の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと初期の活動

新潟県中蒲原郡亀田町（現在新潟市）で生まれた曾我は、大倉商業学校（現在の東京経済大学）を卒業後、映画の世界に入りました。初期には帝国キネマ演芸で脚本家、助監督としてキャリアをスタートさせました。1926年（大正15年）には、押本七之助監督の『侠客』で脚本を担当し、その後も押本監督と共同で作品を制作しました。1927年（昭和2年）には、市川右太衛門が設立した市川右太衛門プロダクションに参加し、押本監督の『侠骨漢 笑ふな金平 前篇』の脚本を手がけました。同年、マキノ・プロダクションに移籍し、片岡千恵蔵主演の『三日大名』の脚本を担当しました。

映画監督としての活躍

1928年（昭和3年）、片岡千恵蔵が設立した片岡千恵蔵プロダクションに参加した曾我は、同社の3作目となる『愛憎血涙』で監督デビューを果たしました。この作品は曾我自身のオリジナル脚本によるものでした。片岡千恵蔵プロダクションでは、総務部長を務める傍ら、稲垣浩、伊丹万作両監督の体調不良時には監督の代役を務めました。日活との配給契約時には、「総務・曾我」の名を出すことが難しく、稲垣監督が曾我の名前「そがまさお」を逆さにして「長間霞窓」という名前を使用しました。その後、1929年（昭和4年）には、ドイツの映画監督フリッツ・ラングにちなんだ「振津嵐峡」という筆名を用いるようになりました。この名前は、友人が集まってラング監督の『ジークフリート』が話題になったことがきっかけで、また、千恵プロのスタッフが京都嵐山の老舗旅館「嵐峡館」を定宿にしていたことに由来します。

千恵蔵プロダクションの設立とその後

1929年（昭和4年）には、嵯峨野に千恵蔵プロダクション撮影所を開設し、片岡千恵蔵とともに経営に携わりました。曾我は同社でトーキーの演出も行いましたが、1937年（昭和12年）に千恵蔵プロダクションは日活に吸収され、曾我は日活京都撮影所の製作部長に就任しました。これにより、曾我は脚本家・監督業を一旦廃業しました。その後、1942年（昭和17年）に大映が誕生すると、曾我は大映京都撮影所の取締役所長に就任し、戦後は大映で取締役製作局長、常務取締役、専務取締役と昇進し、永田雅一社長のもとで製作部門を統括しました。

大映退社後の活動

1958年（昭和33年）には、松尾國三や三宮四郎とともに「日映」を設立しようとしましたが、資金調達の失敗により頓挫しました。その後、ニッポンシネマコーポレーションの取締役会長を務め、1963年（昭和38年）には東京第一フィルムを設立し、洋画の配給を行いました。1987年、東京都多摩市で亡くなり、多磨霊園に埋葬されました。

フィルモグラフィー

曾我正史は、数多くの映画作品に携わりました。初期には脚本家として活躍し、その後監督としても才能を発揮しました。監督作品としては、『愛憎血涙』、『続万花地獄 完結篇』、『ごろん棒時代』などがあります。また、『侠客』や『三日大名』などでは脚本を担当しました。戦後には、製作として『怒りの孤島』や『悪徳』などにも関わっています。

曾我正史の映画界への貢献

曾我正史は、その多才な能力を活かして、映画界の発展に大きく貢献しました。脚本家、監督としての活動だけでなく、プロデューサー、実業家としての手腕も発揮し、映画業界の様々な局面で重要な役割を果たしました。彼の業績は、日本の映画史に深く刻まれています。

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