朝鮮人民軍総参謀部偵察局

朝鮮人民軍総参謀部偵察局は、かつて北朝鮮に存在した軍事諜報機関であり、朝鮮人民軍総参謀部の隷下に位置していました。この組織は、ロシアのGRU（参謀本部情報総局）に相当する役割を担っており、軍事情報の収集や特殊工作員の派遣などを主な任務としていました。

偵察局は、特殊部隊を管轄する軽歩兵教導指導局（特殊第8軍団）に比べて一般にはあまり知られていませんでしたが、1996年に発生した江陵浸透事件を契機にその存在が注目されるようになりました。この事件では、北朝鮮の工作員が韓国に潜入し、大きな騒動を引き起こしました。さらに遡ると、1982年にミャンマーで発生したラングーン事件も、偵察局の工作員によって引き起こされたものとされています。この事件では、韓国の要人が多数犠牲になり、国際的な非難を浴びました。また、非武装地帯（DMZ）を突破して韓国に浸透する「武装共匪」と呼ばれる工作員の中にも、偵察局の要員が多数含まれていたとされています。

偵察局は、武装工作員の派遣や軍事情報の収集以外にも、様々な活動を行っていました。しかし、2009年の情報機関改革によって、朝鮮労働党作戦部や党対外情報調査部と統合され、人民武力部傘下に朝鮮人民軍偵察総局が発足しました。これにより、偵察局は発展的に解消されることとなりました。

機構

偵察局の幹部は、局長が上将、副局長が中将、各処長が少将級とされていました。組織は、以下の8個の部（または処）で構成されていました。

政治処
情報処
特殊処
技術処（ラジオ）
訓練計画処
民警処
海上処
写真参謀処

活動

技術処は、SIGINT（信号情報）部署として機能し、韓国軍の軍事通信情報を広範囲に収集していました。北朝鮮は、先端技術の不足から人的情報（HUMINT）の収集に依存する傾向がありますが、他の情報収集手段を軽視していたわけではありません。1996年までは、ロシアの諜報衛星写真を定期的に購入しており、比較的容易な通信傍受などは自主的に行っていたとされています。また、偵察局の付属機関として、外国語教育機関である鴨緑江大学も運営していました。

偵察局は、朝鮮戦争当時から存在していた組織ですが、その秘密工作に関する情報はほとんど公開されていません。朝鮮戦争中に韓国軍が受けた多くの欺瞞作戦の背後に、偵察局が関与していた可能性も指摘されています。例えば、第8師団に対する虚偽の後退命令などがその例として挙げられます。

1991年の湾岸戦争時には、総参謀部偵察局がアメリカ軍のイラク攻撃開始を24時間前に正確に予測していたという情報もあります。この情報は、大韓毎日新聞（1999年3月23日付）で報じられました。

関連項目

対南工作
ラングーン事件

脚注

* 上記の情報は、様々な情報源に基づき作成されました。出典については、必要に応じて追記いたします。

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