軽歩兵教導指導局

軽歩教導指導局（TUGB）とは

軽歩教導指導局（朝鮮語: 경보교도지도국、英: Light Infantry Training Guidance Bureau / Training Unit Guidance Bureau, TUGB）は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の朝鮮人民軍総参謀部コマンド部隊・特殊作戦部隊、およびこれを統括する司令部組織です。かつては特殊第8軍団として知られていましたが、2010年には第11軍団と改称されました。第630号大連合部隊の単隊号が付与されており、暴風軍団とも呼ばれています。司令部は平安南道徳川市に所在するとされています。

歴史的背景

1955年 4月、金日成委員長の発表により、北朝鮮は南進統一路線から、住民による革命工作へと戦略を転換しました。この「4月テーゼ」は、韓国国内での革命を促すことを目的としていました。一方、韓国では、1960年の四月革命後に北朝鮮との融和の気運が高まりましたが、1961年の5・16軍事クーデターによって反共主義が強まりました。

こうした情勢の中、1966年 5月、朝鮮人民軍は対南工作を専門とする第283部隊を設立しました。しかし、1967年の内部粛清によって第124部隊に改編。1968年には青瓦台襲撃作戦や住民撹乱作戦を実施しましたが、いずれも失敗に終わりました。これらの失敗を受けて、1969年に軍指導部が粛清され、第124部隊は第17偵察旅団を併合して特殊第8軍団として再編されました。1983年 7月には、特殊第8軍団を母体として、各軍の特殊作戦部隊を統合運用する組織としてTUGBが創設されました。

2013年には、北朝鮮の対外宣伝サイトで「3日戦争」というシナリオが公開され、第11軍団（旧特殊第8軍団）が韓国軍後方に展開し、ソウルにいるアメリカ人を人質にする計画が示唆されました。また、2024年には、ロシア派兵に参加した北朝鮮兵士が暴風軍団出身であることが韓国側から指摘されました。

編制

TUGBは、朝鮮人民軍の全ての特殊作戦部隊（SOF）におけるフォース・プロバイダーであり、各種の特殊作戦資産を前線の各部隊に対して提供します。同時に、総参謀部直属のフォース・ユーザーとしての機能も有しています。その隷下には、合計で9万ないし12万名の兵力が存在するとされています。

軽歩兵部隊

「ポンゲ（번개、稲妻の意味）」と通称される軽歩兵部隊は、中隊・小隊規模でのコマンド作戦を主任務とし、軍団の先遣部隊として緊要地形や重要施設の確保、後方撹乱任務を遂行します。また、軍団の機動予備部隊としても機能します。作戦地域は、韓国の前方軍団の作戦地域警戒線以内（30～70km）とされています。より深い浸透作戦は、後述の狙撃部隊や航空陸戦部隊の担当です。

軽歩兵部隊は、TUGB直轄下に3個旅団、前線の各軍団に計11個旅団が配属されているとされます。一部はさらに細分化されて師団に配属されています。直轄の3個旅団は以下の通りです。

81軽歩旅団：慈江道熙川市
82軽歩旅団：慈江道熙川市
87軽歩旅団：咸鏡南道咸興市

狙撃部隊

「ピョラク（벼락、雷の意味）」と通称される狙撃部隊は、軽歩兵部隊と同様の役割を担いつつ、より小規模で特殊な作戦、不正規戦争を主任務としています。3個の狙撃旅団、3個の空軍狙撃旅団、2個の海上狙撃旅団が編成されています。空軍狙撃旅団は空軍、海上狙撃旅団は海軍の指揮下で、それぞれ敵の航空・港湾施設に対する破壊工作を担当しています。一方、狙撃旅団はTUGBの直轄下に置かれ、最精鋭部隊として戦略目標に対する情報・破壊工作を担当します。

狙撃旅団：3個（計10,500名）
海軍狙撃旅団：2個（計7,000名）
空軍狙撃旅団：3個（計10,500名）

航空陸戦部隊

「ウレ（우뢰、雷の意味）」と通称される航空陸戦部隊は、他国の空挺部隊と同様の役割を持ち、3個航空陸戦旅団（計10,500名）が編成されています。An-2小型輸送機などを利用したエアボーン作戦を主任務としています。An-2は、レーダー反射断面積が小さく低被探知性を備えているとされています。

まとめ

軽歩教導指導局は、北朝鮮の特殊作戦を担う重要な組織であり、その高度な訓練と多様な作戦能力は、朝鮮半島の安全保障に大きな影響を与えています。

参考文献

李竜洙 (2011年12月14日). “北朝鮮「暴風軍団」の正体が明らかに”. 2011年12月21日閲覧。
中央日報日本語版 (2011年1月16日). “白頭山脈を伝い７個師団が南下…ソウル・釜山・光州占領作戦”. 2011年12月30日閲覧。

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