朝鮮労働党対外連絡部

朝鮮労働党対外連絡部：北朝鮮の情報機関

朝鮮労働党対外連絡部は、かつて朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）に存在した情報機関です。その主な役割は、韓国内への浸透工作、秘密地下組織の構築、スパイの管理でした。この組織は、かつて「連絡部」や「社会文化部」とも呼ばれており、他の党諜報機関とともに「三号庁舎」という俗称でも知られていました。対外連絡部は、韓国内の親北朝鮮勢力を糾合し、反北朝鮮勢力に対するテロや拉致といった非合法活動にも関与していたとされています。

組織の変遷

2009年の情報機関改革により、対外連絡部は内閣附属の「内閣第225部（室）」に縮小・改編されました。この際、「対外交流局」という名称も用いられました。しかし、その後、組織は再び党所属に復帰し、現在は朝鮮労働党統一戦線部の傘下機関となっています。この変遷は、北朝鮮の情報機関の構造が複雑であることを示しています。

活動内容

対外連絡部の活動は多岐にわたります。主な活動内容としては、以下のようなものが挙げられます。

要人暗殺: 反体制派や敵対勢力の要人を暗殺する工作を行っていました。
日本人拉致: 日本人を拉致し、工作員として利用したり、情報収集の手段としていました。
政治・経済・社会・軍事情報収集: 韓国や日本などの情報を収集し、北朝鮮の政策決定に役立てていました。
流言飛語の流布: 敵対勢力を混乱させるためのデマや偽情報を流していました。
工作員の獲得: 新しい工作員を勧誘し、訓練していました。
浸透工作: 韓国や日本の政治団体、社会団体、宗教団体などに工作員を送り込み、内部から組織を破壊しようとしていました。
工作員の教育・育成: 工作員を秘密裏に教育し、韓国への侵入や地下組織構築を支援していました。
貿易会社の運営: 工作員が貿易会社を運営し、活動資金を調達していました。
麻薬密売等の非合法活動: 麻薬の密売など、非合法な活動を行い、資金を調達していました。
核・ミサイル開発に必要な部品の密輸: 日本から核兵器やミサイル開発に必要な部品を密輸していました。

傘下組織

対外連絡部は、複数の傘下組織を持っていました。

烽火政治大学校: 対南工作員を養成する機関です。金正日政治軍事大学の工作員分校が発展したものです。
日本革命村: 日本における工作活動の拠点です。
洛東江: 情報収集を行う機関です。
在日本朝鮮人科学技術協会（科協）: 在日朝鮮人科学者を組織し、情報収集や工作活動を行っていました。
大聖総局: 貿易会社を運営しており、活動資金の調達や物資の調達を行っていました。20余隻の貿易船を所有していました。

関係者

対外連絡部の部長を務めた人物としては、以下のような人物が知られています。

姜柱日
林東玉
鄭慶姫
李昌善
姜周一

また、有名な工作員としては、金東植、李善実、康成輝などが挙げられます。

関与したとされる事件

対外連絡部が関与したとされる主な事件には、以下のようなものがあります。

文世光事件: 韓国大統領暗殺未遂事件。
よど号関係の日本人拉致事件: よど号グループによる日本人拉致事件。
李韓永暗殺事件: 北朝鮮から亡命した人物の暗殺事件。

また、対外連絡部は、反核運動に関与し、北朝鮮のプロパガンダ誌「おーJAPAN」の発行にも関わっていたとされています。「おーJAPAN」には、岩井章、土井たか子、宇井純、宇都宮徳馬、野間宏、久野収、丸木位里など、日本の著名人がメッセージを寄せていました。

参考文献

以下の文献が、対外連絡部の活動について詳しく述べています。

金賢姫『金賢姫 いま、女として』（文藝春秋1991年）
高沢皓司『宿命-「よど号」亡命者たちの秘密工作』（新潮文庫1998年）
康明道『北朝鮮の最高機密』（文春文庫1998年）
張龍雲『朝鮮総連工作員』（小学館文庫1999年）
安明進『北朝鮮拉致工作員』（徳間文庫2000年）
金富億『北朝鮮のスパイ戦略』（講談社文庫2002年）
李友情（作・漫画）・李英和（監修）『金正日入門』（飛鳥新社2003年）
別冊宝島編集部（編）『決定版! 北朝鮮ワールド』（宝島社文庫2004年）

関連項目

朝鮮民主主義人民共和国の諜報・情報機関
対南工作
対日有害活動
北朝鮮によるテロ事件一覧
北朝鮮による韓国人拉致問題
* 北朝鮮による日本人拉致問題

この組織は、冷戦時代から現代に至るまで、北朝鮮の対外工作の中核を担ってきた存在と言えるでしょう。

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