朝鮮民主主義人民共和国の交通

朝鮮民主主義人民共和国の交通網

朝鮮民主主義人民共和国、一般には北朝鮮として知られる国では、交通網が鉄道、道路、航空、そして海路と多岐にわたって存在します。これらの交通手段は、国内の移動手段や国際的なアクセスにおいて重要な役割を果たしています。外部から北朝鮮に入国する場合は、一般的に中国またはロシアからの航空便、または中国経由の国際列車を利用します。なお、韓国からは入国が不可能です。

道路交通

北朝鮮の道路交通は、燃料不足の影響を受けており、個人の自家用車がほとんど存在しないため、重要性は低くなっています。道路のほとんどは舗装がされておらず、多くの車両は軍用車が占める状況です。交通は右側通行が一般です。

国内には片側2車線の高速道路がいくつか存在し、特に平壌-開城や平壌-元山といった観光道路がそれに該当しますが、実際の通行車両は非常に少ないです。

都市間の移動は主に軍用トラックの荷台を利用する形が多く使われてきましたが、近年では平壌中心に主要都市を結ぶ長距離バス網の整備が進んでいます。バスの運営は人民保安部と人民武力部が行っており、バス運賃は当局が設定する限度価格に基づきますが、実際にはガソリン価格や物価に影響される形で変動します。各道の人民委員会がバスターミナルを管理しているという特異な状況です。

具体的なバス路線には、平壌-元山、平壌-咸興、平城-南浦などがあり、多岐にわたる都市を結んでいます。

鉄道交通

国内の鉄道網は約5,200キロメートルに及び、その多くは標準軌です。特に3,500キロメートルの区間は電化されていますが、施設の維持管理が不十分で、多くの橋やトンネルは老朽化しています。最も重要な鉄道路線は平義線で、平壌から新義州市を経て中国へ通じる幹線です。この区間は比較的整備状況が良好ですが、それでも旅客列車の速度は時速40キロ程度で、列車本数も限られています。

旅客輸送においては鉄道が占める割合が高く、貨物輸送でも重要な手段となっています。また、首都平壌には北朝鮮唯一の地下鉄が運行されており、平壌と清津市間では路面電車も運行されています。

航空交通

航空交通は、高麗航空という国営の航空会社が運営しており、平壌国際空港を拠点としています。ここからは北京、上海、マカオなどへの国際便が定期的に運航されており、中国国際航空が唯一、平壌行きの定期便を提供しています。

海路

海上交通については、2021年現在で国際旅客便はなく、貨物船の往来が主な状況です。かつて万景峰92号が新潟と元山を繋ぐ航路を不定期に運航していましたが、2006年の制裁によって運航が停止されました。また、2017年には羅津港とウラジオストク港を結ぶ旅客船も運航されましたが、経済制裁によって早々に運休となり、貨物専用に変更されました。最近では、中国からの定期航路の開設が発表されるなど、徐々に海上交通の再開が模索されています。

北朝鮮の交通網は多くの課題を抱えていますが、近年の整備進展や、国際情勢の変化が今後の交通網にどのように影響を与えるかは注目されます。

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