朝鮮民主主義人民共和国の租税

北朝鮮の租税制度：公式には存在しない税金の実態

北朝鮮は、公式には『世界唯一の税金がない国家』を標榜しています。1974年4月1日、最高人民会議が「税金制度の廃止について」の法令を採択し、所得税などの直接税を廃止したと宣言しました。この4月1日は「税金制度廃止の日」として記念日となっています。この宣言は、所得税などの直接税を「古い社会の遺物」とみなした金日成主席の指示によるものでした。

しかしながら、この宣言とは裏腹に、北朝鮮政府は国民から様々な名目で税金を徴収しています。その主要な歳入源は、売上税などの間接税です。直接税の廃止後も、政府歳入の大部分を売上税、国営企業の利益金、公共施設利用料金などが占めており、財政に大きな影響はありませんでした。これは、他の社会主義国の財政事情と同様でした。

北朝鮮国内では「税金」という言葉は使用されず、「社会主義所得会計」や「社会主義的経済管理所得」といった表現が使われています。これは、社会主義経済体制下での独特の会計処理を反映したもので、国民にとって、税金と認識されているかどうかは別問題です。

直接税の廃止と間接税の増加

1947年に導入された農産物の物納税は、農業集団化が完了した1966年に廃止されました。個人の所得税は、1974年の廃止後も、党大会開催などを口実に様々な名目で募金活動が行われたり、国家事業への無償動員が行われたりするなど、事実上の税金が継続的に課せられています。所得税廃止時の税率は一律1.8%でした。

一方、法人税に関しては、現代の付加価値税に相当する「取引所得金」が「国家企業利益金」として事実上、法人税として維持されました。経済特別区外の企業もこの国家企業利益金という名目で事実上の法人税を納税しています。2016年8月の税制改革により累進課税が導入され、2018年現在の最高税率は32.5%となっています。

経済特別区の税制

開城工業地区などの経済特別区では、外国企業の操業が許可されており、独自の税制が適用されています。加工貿易法、著作権法、脱税に関する法律などに法人の租税に関する条項があり、法人税が存在します。2000年代初頭の法人税率は10～14％と推定されています。労働者も間接税の対象であり、外国企業から支払われた賃金のうち、一部は社会保険料や「社会文化費用」の名目で差し引かれた上で、労働者に給付されます。2013年の推計では、工業団地の労働者に課せられていた税率は45%でしたが、2016年の韓国統一部の発表によると、賃金として外国企業から支払われた70%が核兵器・ミサイル開発に流用されていたとされ、韓国は共同事業を中止しました。

まとめ

北朝鮮の税制は、公式には廃止されているとされていますが、実際には様々な名目の徴収が行われており、複雑な実態を呈しています。売上税が主要な歳入源であり、法人税も存在します。経済特別区では独自の税制が適用され、外国企業も課税対象となっています。これらの複雑な徴税システムは、北朝鮮の不透明な経済状況と密接に関連していると考えられます。透明性の低い税制は、国際社会からの信頼を損ない、経済発展の阻害要因ともなりかねません。今後の北朝鮮の経済改革において、税制の透明化と合理化は重要な課題となるでしょう。

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