朝鮮総督府鉄道パシシ形蒸気機関車

朝鮮総督府鉄道のパシシ形蒸気機関車

朝鮮総督府鉄道が用いた「パシシ形蒸気機関車」は、1927年から1940年までの間に製造された旅客用のテンダ式蒸気機関車です。この機関車の「パシシ」という名称は、ホワイト式の4-6-2車輪配置を指し、日本式の2C1、およびアメリカ式の呼称「パシフィック」に由来します。総計82両が製造されたこの形式は、当時の朝鮮の鉄道事情に配慮して設計されるなど、非常に実用的な機関車として知られています。

機関車の設計と特徴

「パシシ形」は、過熱式単式2気筒の構造を持ち、特に地域の石炭の燃焼特性を考慮した設計がされています。朝鮮産の褐炭に適応するために、広火室を採用しており、効率的なボイラーが実現されています。内部のデザインもアメリカスタイルを採り入れており、砂箱や蒸気ドームが缶胴に配置され、全体的に流麗な印象を与えます。

また、特に注目すべきは、1936年に製造された4両の専用機が特別急行列車「アカツキ」の牽引に用いられたことです。これらの機関車は、運転台を密閉式にするなどの特別装備が施され、当時の最高の技術が利用されています。

製造と運用

パシシ形の製造は川崎車輛などにより行われ、初期の20両は971から990までの番号が付けられました。その後、1938年の規程改正に伴い、パシシ1からパシシ20に改番が行われ、製造は続きました。これに続く製造は、主要な幹線である京釜線や京義線での運用に重点を置かれており、急行列車や鮮満連絡列車の牽引も行います。

戦後、この機関車は南北朝鮮に分かれ、それぞれの国鉄で使用されました。特に韓国ではパシ4形と名付けられ、現在もその運用歴が興味深い記録として残っています。北朝鮮における運用については詳細が不明ですが、一時期まで華中鉄道でも使用されていたことが確認されています。

保存状態

現在、韓国国内でのパシシ形蒸気機関車の保存機は存在しませんが、中国では勝利12型として保存されている一両があります。これは、かつてのパシシ形蒸気機関車の姿を今に伝える貴重な資料となっています。こうした機関車の歴史は、朝鮮の鉄道開発における重要な要素として今も多くの人々に語り継がれています。

参考文献

• - 河西明、新井一仁『朝鮮総督府鉄道局で生きた車両たち 5 蒸気機関車（標準軌）の全容』湘南鉄道文庫、2000年。
• - 沖田祐作『機関車表 フルコンプリート版』ネコ・パブリッシング、2014年。ISBN 978-4-7770-5362-9。

朝鮮総督府鉄道におけるパシシ形蒸気機関車は、その実用的な設計と運用によって、多くの旅客輸送に寄与した重要な存在でした。

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