木下俊長

木下俊長は、慶安元年（1649年）に生まれ、豊後国日出藩の3代藩主として藩政を担いました。その治世は、領民のための政策と文化の振興に彩られています。

初期の経歴と藩主就任

万治元年（1658年）に将軍徳川家綱に初めて拝謁し、寛文元年（1661年）に父の死去に伴い家督を継ぎました。同年12月には従五位下右衛門大夫に叙任され、藩主としての地位を確立しました。

神社堂宇の整備と文化振興

寛文9年（1669年）には日出若宮八幡神社の本殿を、元禄時代には渡殿・拝殿、神楽殿、楼門、絵馬殿を建立し、今日の美しい堂宇を完成させました。これらの事業は、領内の文化振興に大きく貢献しました。

城下町の整備と民政

延宝3年（1675年）には城下の整備に尽力し、領民の生活基盤を向上させました。また、天和3年（1683年）には、罪を犯した旗本大久保源次郎忠宣を預かり、貞享3年（1686年）まで幕命により身柄を拘束しました。この出来事は、藩主としての責任感と公正さを示すものです。

農民離散騒動と潔白の証明

治世中、農民が逃散したことを恥じた俊長は、自ら反省のために謹慎しました。しかし、元禄11年（1698年）に幕府が糾明した結果、農民の訴えは事実無根であることが判明し、出仕を憚る必要はないとの台命が下されました。この一件は、領民に対する深い配慮と、自らの行いを省みる真摯な姿勢を示しています。

隠居と晩年

宝永4年（1707年）9月12日、家督を長男の俊量に譲り隠居。享保元年（1716年）9月8日に日出で69歳で死去しました。法号は桂峰院、墓所は大分県速見郡日出町の松屋寺にあります。大正5年（1916年）には、その功績を称えられ従四位が追贈されました。

木下俊長は、藩政の安定と文化の振興に貢献した名君として、今もなお日出の地で敬愛されています。

参考文献
堀田正敦『国立国会図書館デジタルコレクション 寛政重脩諸家譜. 第7輯』國民圖書、1923年、178頁。
東京大学史料編纂所　木下家譜（豊後日出）

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