木下友三郎

木下 友三郎（きのした ともさぶろう）は、元治元年（1864年）に生まれ、昭和19年（1944年）に80歳でその生涯を閉じた日本の司法官であり、また教育者としても顕著な功績を残しました。

生涯と業績

元治元年（1864年）8月8日（新暦では9月8日）、紀伊国日高郡御坊町（現在の和歌山県御坊市）に、地元の名士である木下誉一郎の三男として生を受けました。幼少期は、財部村の好浄寺住職、湯川知城が主宰する私塾「後凋学舎」にて漢学を修め、学問の基礎を築きました。

法律の道を志し、明治13年（1880年）9月には司法省法学校に入学。この学校では、後に日本の司法界を牽引する人材が多く学び、木下もまた、後に大審院長となる横田秀雄や、日本銀行副総裁を務めた水町袈裟六といった傑出した面々と同期として共に学びました。司法省法学校の廃止後、学びの場を東京法学校に移し、さらに帝国大学法科大学（現在の東京大学法学部）の仏法科に編入。高度な法学教育を受けました。明治21年（1888年）7月に帝国大学を卒業すると、司法部に入り、法曹としてのキャリアをスタートさせます。

司法官としては、東京控訴院の判事や、行政裁判所の部長など、要職を歴任し、その公正かつ的確な判断力をもって日本の法制度の運用に貢献しました。しかし、大正2年（1913年）6月には司法官の職を休職しています。

教育への情熱

木下友三郎は、司法官としての職務を遂行する傍ら、教育者としても並々ならぬ情熱を燃やしました。数多くの私立法律学校で教鞭を執り、次世代の法律家育成に力を注ぎました。彼が講義を行った学校には、日本法律学校（現在の日本大学）、専修学校（現在の専修大学）をはじめ、慶應義塾大学部や法政大学といった名だたる学府が含まれます。

中でも、彼が最も深く関わったのは、後に明治大学となる明治法律学校でした。明治45年（1912年）、当時の校長であった岸本辰雄の逝去に伴い、その後任として明治法律学校の校長に就任しました。大正9年（1920年）、日本の高等教育機関が大学令に基づいて再編される中で、明治法律学校は明治大学へと改組され、木下はここに初代の学長として就任するという重責を担いました。さらに、昭和9年（1934年）には3月から9月にかけて、昭和13年（1938年）から昭和14年（1939年）にかけては再び、それぞれ明治大学の総長を務め、合計で二度にわたり大学の最高責任者としてその発展に尽くしました。

人物と晩年

木下友三郎は、その生涯を通じて、「典型的な明治文明人」と評されるほど、近代日本の知性と教養を体現した人物であったと言われています。長年にわたる司法官および教育者としての功績に対し、昭和15年（1940年）11月10日には勲二等瑞宝章を授与されています。

家族としては、二人の息子が共に画家の道を歩んだことが知られています。長男は洋画家の木下孝則、次男は日本画家の木下義謙であり、父とは異なる芸術分野でそれぞれの才能を開花させました。

昭和19年（1944年）11月22日、胃癌のため、東京都渋谷区千駄ヶ谷の自宅にてその波乱に富んだ生涯を閉じました。司法官として国家の基盤を支え、また教育者として幾多の人材を育て上げ、特に明治大学の近代化と発展に多大な貢献をした木下友三郎の業績は、今日まで語り継がれています。

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