木之下晃

木之下 晃（きのした あきら）

木之下晃（1936年7月16日 - 2015年1月12日）は、日本を代表する写真家であり、主に音楽を題材にした作品で知られています。長野県諏訪郡上諏訪町（現在の諏訪市）で生まれた彼は、諏訪清陵高等学校と日本福祉大学を卒業後、中日新聞社や博報堂での経験を経て、1973年にフリーランスの写真家として独立しました。

彼の作品は、音楽の指揮者や演奏家、作曲家を中心に撮影されており、世界各国のコンサートホールやオペラハウス、作曲家のゆかりの地で音楽に関するさまざまな写真を収めています。特に、彼は「音楽写真家」としてのアイデンティティを大切にし、その活動を通じて音楽の世界を表現しています。

アーカイヴスの設立と写真への情熱

2010年、彼は3万本を超えるフィルムを管理するための「木之下晃アーカイヴス」を設立しました。これにより、彼の作品が次世代に引き継がれることを期待しながら、音楽と写真のかかわりに対する深い情熱を示しています。

木之下は、自著の中でデジタルカメラを使用せず、フィルムカメラを愛用していると述べています。彼は「キレイな写真」と「イイ写真」が異なるという考えのもと、フィルムカメラによって得ることのできる情感の表現力を重視しています。特に肖像写真は自分にとっての原点であり、彼はそれを「永遠の課題」と捉えています。

影響を受けた人物と貴重なエピソード

彼の肖像写真に多大な影響を与えたのは土門拳であり、木之下自身もこのフィールドで多くの作品を残しています。あるエピソードによれば、著名な写真家の林忠彦は、自身が音楽家を撮影することを避けた一方で、木之下の作品には深い敬意を示したと言われています。また、作品を持たなかったトーベ・ヤンソンが木之下の写真を気に入って選んだこともあるなど、彼の作品が広く評価される様子が伺えます。

木之下の作品は、2012年9月にはニコンの役員室の収蔵コレクションに追加され、名だたる写真家たちと並ぶこととなりました。

写真集と受賞歴

彼の著作としては、以下のような重要な写真集があります。

• - 『SEIJI OZAWA―小澤征爾の世界』（1981年）
• - 『世界の音楽家I・指揮者』（1984年）
• - 『音楽家のオフ・ステージ』（1996年）
• - 『最後のマリア・カラス』(2012年)

受賞歴も非常に多く、1971年には日本写真協会賞新人賞、1986年に芸術選奨文部大臣賞を受賞するなど、彼の作品は多くの美術展で評価された結果を示しています。さらに2006年には紺綬褒章、2008年には新日鉄音楽賞特別賞を受章しました。

メディアへの出演

近年では2007年にNHKのハイビジョンプログラム「カメラで音楽を撃て」に出演し、彼の創造的なプロセスや作品に対する考え方を紹介しました。

木之下晃は、音楽写真という独自の領域で日本の写真界に多くの足跡を残し、彼の作品は今も多くの人々に感銘を与え続けています。

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