木寺昌人

木寺昌人：国際舞台を駆ける外交官の軌跡

木寺昌人氏は、1952年生まれの日本の外交官である。華々しい経歴は、幼少期の経験にその端緒を見出す。父は元通産省技官で川崎製鉄常務を務めた木寺淳氏。父の仕事の関係で、木寺氏は小学校時代をパリとブリュッセルで過ごし、現地校に通った。この経験が、氏の国際的な視野と語学力（特にフランス語）の基礎を築いたと言えるだろう。

帰国後、都立戸山高校を経て東京大学法学部第二類（公法コース）を卒業。1976年、外務省に入省する。その後、フランス語研修を経て、キャリアを着実に積んでいく。外務省における氏の活躍は多岐に渡る。アジア局中国課首席事務官として、日中国交正常化20周年（1992年）関連業務に従事した経験は、後に中国大使を務める上で大きな礎となった。経済協力局無償資金協力課長、大臣官房会計課長などを歴任。1994年には、明仁天皇・皇后美智子両陛下（当時）のフランス国賓訪問に同行し、通訳などを担当した。

2001年には、外務省機密費流用事件の調査に携わった。この際、過労により入院療養を余儀なくされたが、その献身的な姿勢は高く評価された。その後も、駐仏公使、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部公使、大臣官房審議官などを歴任し、国際舞台で活躍を続ける。2008年には、開催まで130日と迫っていた第4回アフリカ開発会議に緊急対応するため、中東アフリカ局アフリカ審議官に就任。準備期間の短さにも関わらず、その手腕を発揮して会議の成功に大きく貢献した。

2010年には大臣官房長に就任。翌2012年には、内閣官房副長官補（外政担当）を経て、駐中華人民共和国特命全権大使に就任する。中国大使としての任期中は、日中関係の安定化に尽力した。2016年には駐フランス特命全権大使に転任。フランスでの豊富な経験と高いフランス語能力を生かし、両国の友好関係強化に貢献。さらに、レジオンドヌール勲章シュヴァリエを受章するなど、その功績は高く評価されている。2019年に大使を退任後も、日本たばこ産業シニアアドバイザー、日本製鉄社外取締役、丸紅取締役、日本たばこ産業取締役などを歴任し、多様な分野で活躍を続けている。

木寺氏の名前「昌人」は、中国武昌の「昌」の字から一字を取ったものである。10月10日が武昌で辛亥革命が起きた日であることに由来し、孫文への強い関心につながったという。外祖父が中国大連で働いた経験があり、母も大連生まれという生い立ちも、氏の対中姿勢に影響を与えたと考えられる。

外務省での同期には、多くの著名な外交官が名を連ねる。齋木昭隆氏、鶴岡公二氏、兒玉和夫氏、國方俊男氏など、日本の外交史に名を刻んだ人物たちと肩を並べ、切磋琢磨した経験は、氏のキャリア形成において大きな意味を持つ。

木寺昌人氏の経歴は、日本の外交官としての卓越した能力と、国際社会における多様な経験の豊富さを示すものと言える。その経験と実績は、今後の日本の外交政策にも大きな影響を与えるだろう。

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