木村登紀子

木村 登紀子

木村 登紀子（きむら ときこ）は、1940年10月27日生まれの日本の心理学者です。臨床心理学、健康心理学、人間性心理学を専門とし、聖路加国際大学名誉教授の肩書きを持ちます。特に医療や看護の現場における患者とその家族への心理的ケアに関する研究と実践で知られています。

経歴

木村登紀子の学術的な道のりは、東北大学から始まりました。1964年に文学部の心理学科を卒業後、大学院文学研究科の心理学専攻に進み、1966年に修士課程を修了しました。その後、博士後期課程にも進みましたが、研究の途上で離れることとなりました。

キャリアの大部分は、聖路加看護大学（現在の聖路加国際大学）で看護学部の教授として過ごしました。ここでは、医療従事者を目指す学生たちに心理学の知識を教える傍ら、医療現場特有の心理的問題や、病に苦しむ人々が抱える困難に寄り添う心理的ケアのあり方を探求しました。

2001年からは、淑徳大学の総合福祉学部教授として教鞭を執り、心理学の知見を福祉分野にも応用する研究・教育に取り組みました。多様な視点から心の支援を考える姿勢は、ここでの経験によって培われたと言えるでしょう。

長年の研究と教育活動が高く評価され、2005年には東北大学より博士（文学）の学位を授与されました。これは、彼女の学術的な貢献が認められた大きな節目です。

人物と専門性

木村登紀子は、臨床心理士および指導健康心理士の資格を持ち、専門家として実践活動も行いました。彼女の専門性は幅広く、医療・看護領域での心理支援、終末期医療における心理ケア、そして「いのち」や死生観に関する心理学的探求などが含まれます。

人間性心理学の視点を重視し、カウンセリングや心理療法にその考え方を取り入れました。カール・ロジャーズが提唱したクライエント中心療法や、ユージン・ジェンドリンによるフォーカシングといった手法への造詣も深く、これらの実践を通じて、個々の内面に寄り添うケアを目指しました。また、箱庭療法のような非言語的なアプローチにも関心を寄せ、心理支援の可能性を広げました。

著作

木村登紀子の研究成果は、複数の著作にまとめられています。特に、医療・看護現場での心理的ケアに焦点を当てた著作は、多くの医療・福祉従事者にとって重要な参考書となっています。代表的なものとしては、岡堂哲雄氏編集の『死にゆく患者への援助』（1997年、金子書房）に寄稿した章や、『医療・看護の心理学 - 病者と家族の心理とケア』（1999年、川島書店）があります。これらの書籍では、病と向き合う人々やその家族の心理を深く理解し、具体的な支援方法を提示しました。

さらに、『つながりあう「いのち」の心理臨床 患者と家族の理解とケアのために』（2009年、新曜社）では、生命のつながりや死生観といった根源的なテーマに心理臨床の立場から切り込み、その考察は多くの読者に深い共感を呼びました。

共著としては、『発達と教育の心理学』（1996年、福村出版、高嶋正士ほか共著）などがあります。これらの著作群は、木村登紀子の多岐にわたる研究関心と、実践に基づいた知見の深さを示しています。

学会活動

木村登紀子は、心理学の発展と普及にも積極的に貢献しました。日本ヒューマン・ケア心理学会では常任理事として、学会運営の中心的な役割を担いました。また、日本健康心理学会では理事を務め、健康心理学の研究推進に尽力しました。

この他にも、日本心理臨床学会、日本人間性心理学会、日本臨床死生学会、日本社会心理学会など、様々な分野の学会に所属し、活発な学術交流を行いました。学会活動を通じて、自身の研究成果を発表し、他の研究者や臨床家との議論を深めることで、日本の心理学界全体の発展に寄与しました。

関連人物・概念

木村登紀子の学術的な基盤には、心理学全般に加え、特に臨床心理学や人間性心理学があります。彼女のアプローチは、人間性心理学の重要人物であるカール・ロジャーズやユージン・ジェンドリンの思想と共通点があり、これらの考え方から示唆を得ていたと考えられます。フォーカシングや箱庭療法といった実践的な技法への関心も、その探求心を示しています。

また、そのキャリアを通じて、医療や福祉の分野で多くの専門家と関わりを持ちました。心理学者の岡堂哲雄氏とは著作を共にするなど、学術的な交流がありました。聖路加国際大学での長年の勤務は、日本のホスピスケアの発展に貢献した日野原重明氏など、医療分野の様々な人物と交流があった可能性を示唆しています（インプット情報からは直接的な関係性は明確ではありません）。淑徳大学での教職経験も、彼女の多様な活動の一端を示しています。これらの関連人物や概念は、木村登紀子の研究と実践の幅広さを示唆しています。

木村登紀子は、日本の心理学、特に医療・看護領域における心理的ケアの分野において、教育、研究、実践の三面から重要な役割を果たしました。その業績は、現在および将来の心理臨床家にとって、貴重な学びの源泉であり続けるでしょう。

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