木村重

木村重

木村重（きむら しげる、1902年 - 1977年3月19日）は、日本の著名な魚類学者です。

生涯

茨城県に生まれた木村は、幼少の頃から鬼怒川の自然に親しみ、少年時代はアンモナイトなどの化石採集に熱中しました。旧制山形高校時代には、化石採集のために満州まで足を運んだという逸話も残っています。その後、魚類研究へと興味を移し、東京帝国大学農学部水産学科に進学。岸上鎌吉に師事し、卒業後は同大学の副手となりました。

1927年からは、岸上らと共に揚子江流域の魚類調査に参加。済南事件による中断を挟みながらも、3度にわたる調査で中国各地を巡りました。重慶ではハシナガチョウザメの標本を入手するなど、貴重な成果を挙げています。マラリアや土匪の襲撃といった困難にも見舞われましたが、「蜀の桟道」を踏破し成都に到達。しかし、岸上の急逝により調査は打ち切られました。

帰国後も木村の探求心は衰えず、単身で中国に渡り採集を続けました。上海自然科学研究所生物学部の研究員に内定し、魚類研究室を立ち上げます。満州事変勃発後も採集を継続。1934年には、岸上らとの調査結果をまとめた「故岸上理学博士一行の採集せる揚子江魚類報告」を発表しました。京城帝国大学の森為三の紹介で柴田清と親交を深め、柴田を同研究所に招聘しています。また、同研究所の機関誌「自然」の題字を担当した魯迅とも交流し、中国各地の民俗誌や伝承にも深い関心を抱くようになりました。

その後、木村の調査範囲は中国全土に広がり、徒歩やジャンクを主な移動手段として、過酷な採集旅行を敢行。各地で地元住民と交流し、海賊から通行手形を授けられるなど、ユニークなエピソードも残っています。同時に、各地の口碑伝承や奇譚も収集し、上海の自宅は文化人や軍人の集まるサロンとなりました。

1938年に研究所を退職後も、上海を拠点に東南アジア各地で採集を続けました。大東亜戦争中は日本帝国海軍武官室に勤務し、軍の協力を得てニューギニア奥地での採集も行っています。

木村は、中国の淡水魚に関する貴重な古書を多数所蔵していましたが、終戦後の国外退去の際にその多くを失いました。帰国後は、東京大学農学部の非常勤講師や大阪産業大学教授などを経て、三京水産の顧問に就任。柴田清や四竈安正らと東京水棲生物研究所を設立し、養殖・フィッシュマガジンに執筆しました。

著書

* 魚紳士録

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