木津川昭夫

木津川 昭夫

木津川 昭夫（きつかわ あきお、1929年〈昭和4年〉10月28日 - 2012年〈平成24年〉5月22日）は、20世紀後半から21世紀にかけて活躍した日本の詩人である。北海道滝川市に生まれ、同地の旧制滝川中学校（現在の北海道滝川高等学校）を卒業した。

戦後間もない時期から詩作活動を始め、詩の世界に足を踏み入れた。北海道新十津川町の同人誌「道標」に参加し、その後、詩人・更科源蔵が主宰していた札幌市の詩誌「野性」に加わるなど、地方での詩人たちとの交流を通して自己の表現を深めていった。やがて活動の場を広げ、東京の重要な文芸同人誌である「文芸首都」にも参加し、中央詩壇との接点を持つようになる。

上京後も精力的な活動を続け、詩人としての独自の道を切り開いた。1973年には詩誌「ホルン」を、1977年には詩誌「曠野」を相次いで創刊し、自らの編集のもとで詩作品を発表・批評する場を設けた。「ホルン」や「曠野」には、狩野敏也や矢口以文といった詩人たちが同人として名を連ね、活発な活動を展開した。これらの詩誌創刊は、木津川昭夫が詩壇においてリーダーシップを発揮し、新たな詩の潮流を模索していたことの証と言える。

また、「火牛」「青い花」「日本未来派」といった他の重要な詩の同人誌にも参加し、多様な詩的実験や表現運動に関わった。これらの活動は、木津川昭夫の詩が特定のスタイルに留まらず、常に変化と挑戦を志向していたことを示唆している。詩作活動と並行して、詩壇の発展にも貢献し、2001年から2002年にかけては、日本の現代詩の主要な団体である日本現代詩人会の会長を務めた。これは、彼の詩人としての功績と、詩壇における信頼と評価の高さを物語っている。

その詩業は高く評価され、数々の文学賞を受賞している。1997年には詩集『迷路の闇』により第30回小熊秀雄賞を受賞。これは北海道出身の詩人に贈られる権威ある賞である。さらに、1999年には詩集『竹の異界』で第32回日本詩人クラブ賞を受賞し、その地位を確固たるものとした。2001年には詩集『掌の上の小さな国』が第13回富田砕花賞を受賞するなど、晩年まで主要な文学賞に輝き続けた。これらの受賞歴は、彼の詩が幅広い読者や批評家から支持されていたことを示している。

木津川昭夫は多くの詩集や評論集を世に送り出した。その著作は、詩人としての内面世界を探求したものから、詩論やエッセーに至るまで多岐にわたる。主な著作には以下のようなものがある。

『幻想的自画像』　潮流社、1971年
『雪の痛み』　ホルン社、1975年
『夢の構造』　昭森社、1979年
『鳥たちの祭り』　晴文社、1980年
『木津川昭夫詩集』　芸風書院、1982年
『氷見』　荒地出版社、1984年
『凩と鳥語の男』　砂子屋書房、1989年
『迷路の闇』　砂子屋書房、1996年（第30回小熊秀雄賞受賞作）
『竹の異界』　砂子屋書房、1998年（第32回日本詩人クラブ賞受賞作）
『セントエルモの火』　土曜美術社、1999年
『新編　木津川昭夫詩集』（日本現代詩文庫28）　土曜美術社、1999年
『掌の上の小さい国』　思潮社、2002年（第13回富田砕花賞受賞作）
『生と変容　詩論・エッセー集1』　土曜美術社、2003年
『禁猟区』　土曜美術社、2003年
* 『詩と遊行　詩論・エッセー集2』　土曜美術社、2005年

これらの作品を通して、木津川昭夫は日本の現代詩に独自の足跡を残した。彼の詩は、故郷北海道の風土や戦後の社会状況、あるいは人間存在の根源的な問いを背景に、内省的でありながらも普遍的なテーマを扱っていると言えるだろう。2012年に死去するまで、日本の詩壇において重要な存在であり続けた。

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