大崩山

大崩山：九州山地の険しくも美しい峰

宮崎県延岡市北西部にそびえる大崩山は、九州山地に属する大崩山群の主峰です。その名は、東側斜面に崩れたように見える風化した花崗岩の露出に由来しています。山頂付近には灌木が生い茂り、見晴らしは必ずしも良くありませんが、少し下った地点からは由布岳、九重連山、阿蘇山、雲仙岳、祖母山、傾山、市房山、霧島山など、九州を代表する山々を一望できます。

大崩山は、周囲を屹立する岩峰群に囲まれた景勝地であり、北東山麓には祝子川渓谷、南西山麓には鹿川渓谷が流れ、豊かな自然に恵まれています。西南戦争の際、西郷隆盛率いる薩摩軍が、この地を通過した歴史も持ちますが、古くから山岳信仰の対象とはならず、大正時代以前は登山者はほとんどいませんでした。しかし、1965年に祖母山、傾山と共に祖母傾国定公園に指定されて以降、年間2万人を超える登山者やハイカーが訪れるようになりました。1992年には全国高等学校総合体育大会登山競技大会も開催されています。

登山道は4つのコースが知られていますが、いずれも危険な箇所が多く、ロープ渡りや梯子登りが連続する箇所もあります。熟練者でも遭難や滑落の危険性があるため、初心者には不向きです。初心者の方は、必ず経験者と同行することを強く推奨します。

豊かな自然と独特の地質

大崩山には、モミ、ツガ、ブナ、カエデなどの原生林が広がり、ニホンカモシカなどの野生動物も生息しています。山頂付近はホルンフェルスからなり、その下には東西15キロメートル、南北13キロメートルにわたる花崗岩ドーム（バソリス）が横たわっています。周辺の基盤地層は四万十層群北帯ですが、この地層を貫くように、東西37キロメートル、南北32キロメートルに及ぶ環状岩脈が形成されています。この岩脈に沿って、可愛岳、行縢山、茶臼山、比叡山、矢筈岳、丹助岳など、山々が連なっています。

この独特の地質・地形は、およそ1400万年前の火山活動によって形成されたと考えられています。祖母山と傾山付近でカルデラが形成された後、その南東部に環状の亀裂が生じ、大規模な噴火が発生。大崩山カルデラ（コールドロン）が形成されました。この際に地下から上昇したマグマが冷却され、環状岩脈が形成されました。カルデラ中心部では花崗岩ドームも形成され、上部の四万十層群の地層は加熱されてホルンフェルスとなりました。その後、九州山地の隆起と侵食を経て、緻密なホルンフェルスからなる大崩山が現在の姿になったのです。つまり、大崩山はカルデラ火山の地下部分が地表に露出したものであると言えるでしょう。袖ダキ展望所から小積ダキ、大崩山山頂、下ワク塚の岩峰と、変化に富んだ地形を楽しむことができます。

まとめ

大崩山は、その険しさ、美しい景観、そして独特の地質構造から、登山家や地質学者を魅了する山です。しかし、その危険性も踏まえ、十分な準備と経験を積んでから登山に挑戦することをお勧めします。

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