木蘇国造

木蘇国造の概要とその背景

木蘇国造（きそのくにのみやつこ）は、偽書である『先代旧事本紀大成経』の中でのみ言及される架空の国造です。この国造に関する記録は『先代旧事本紀大成経』の国造本紀を除いて、他の史料には全く見受けられません。この事実から、木蘇国造は歴史的な実在性を持たないことが明らかです。

偽系図とその成り立ち

1956年、田中卓は阿蘇氏の系図を探しに宮地の阿蘇家を訪れましたが、そこで得られたのは「中田憲信所贈」と記載された「異本阿蘇系図」というものでした。田中は、この系図が江戸中期以降に成立したものと考えましたが、実際には明治時代に中田憲信によって作成されていました。

この系図は、「武五百建命（けんいわたけのみこと）」を祖として、科野国造と阿蘇国造が異なる系譜で繋がっていることを示しています。しかし、この系図には古代の行政区分の変遷や、阿蘇氏が持っていた地位についての説明が含まれており、歴史的事実と適合しない部分が多いとされています。

阿蘇氏の系図の成立

阿蘇氏の系図は、『続群書類従』に収録されていました。この文献は、〒鎌倉時代に遡る伝説の祖から始まり、阿蘇惟光、阿蘇惟善、阿蘇友貞と続く系譜を記録しています。これに神武天皇から惟人までの系図が加えられ、さらに友貞の子である阿蘇友隆の時代に成立しました。しかし、異本系図はこの成立の過程において特に知られておらず、詳細な系図があれば、阿蘇氏の系図作成の際に採用されるべきものでした。

異本阿蘇系図の信憑性

昭和58年に飯田瑞穂が述べたように、国造から郡督、大領への肩書きの変遷を示す具体例がいくつか存在しています。彼は、系図作成の専門家が常に存在してきたことから、これらの変遷は国学者たちの知識と理解を反映したものであると指摘しました。一方で、現存する異本阿蘇系図の信憑性が疑わしいことも明確にされました。

平成8年には村崎真智子が、異本阿蘇系図の原点は明治初期の中田憲信本に由来すると明らかにしました。彼女はまた、この系図に含まれる内容が後世の偽作である可能性を示唆しました。これは、飯田と中田が偽作に関与していたとする見解を裏付けるものです。

偽系図の背景と反響

飯田や中田などの国学者は、彼らが偽作した系図に対する疑念が広がることを警戒しました。そのため、系図の信憑性を高めるために「国造から郡督、大領への変遷」を示す注記を加えました。このような補強によって、異本系図の内容が楽観的に受け入れられるようにされたのです。

阿蘇氏に関連する文脈を考慮すると、歴史的な評価は重要であり、阿蘇氏の系図の信頼性は、阿蘇惟宣以降に基づいているとされます。これは、他の系図のように偽作によって保証されるものではないとされています。

結論

最後に、間枝遼太郎は、『阿蘇氏略系図』に記された歴史的事実の整合性が先人たちの研究によって否定されていると指摘しています。このことは、異本阿蘇系図が持つ歴史的意義を問い直す必要があることを示しています。古代の系図は現代の歴史学の中で、どのように評価されるべきか、改めて考察が求められています。

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