木越治

木越治：近世文学研究の巨匠

木越治（1948年11月20日-2018年2月23日）は、日本の国文学を代表する学者の一人です。金沢大学名誉教授、上智大学教授を歴任し、日本近世文学、とりわけ上田秋成に関する深い研究で知られています。その業績は、単なる学問にとどまらず、講談や韓国の評弾との比較研究など、多角的な視点を取り入れた独創的なものでした。

学術的キャリアと研究

石川県金沢市出身の木越氏は、金沢大学文学部国文学科を卒業後、東京大学大学院人文科学研究科国語国文学専修課程に進学。博士課程を中退後、武蔵高等学校教諭、富山大学教養部講師・助教授を経て、1983年に金沢大学教養部助教授に就任します。1998年には同大学教授に昇進。1996年には東京大学より「秋成論」で文学博士号を取得しました。

2010年には上智大学文学部国文学科教授として活躍の場を移し、2014年に定年退職。その後も金沢大学名誉教授として、後進の育成に尽力しました。

上田秋成研究における貢献

木越氏の研究の中心は、近世の文豪、上田秋成です。その著作『秋成論』は、秋成作品への深い理解と独自の解釈を示しただけでなく、当時物議を醸していた呉智英の石川淳批判への反論として、学界に大きな衝撃を与えました。単に秋成作品を分析するだけでなく、秋成作品の講談化や口演、更には講談と韓国の評弾との比較研究など、多様なアプローチを通して、近世文学への理解を深めることに大きく貢献しました。

教育者としての姿

木越氏は、優れた研究者であると同時に、熱心な教育者でもありました。多くの学生を指導し、彼らが国文学研究の道を歩む上で大きな影響を与えました。専修大学准教授の丸井貴史氏など、多くの教え子が現在も第一線で活躍しています。また、ご子息である木越俊介氏は、国文学研究資料館准教授として、父の後を継いで研究活動を続けています。

多彩な著作と業績

『秋成論』以外にも、数多くの共編著、校注、論文を発表しました。『浮世草子怪談集』『都賀庭鐘・伊丹椿園集』『西鶴 挑発するテキスト』『秋成文学の生成』『講談と評弾 伝統話芸の比較研究』『江戸怪談文芸名作選』など、その著作は多岐に渡り、いずれも近世文学研究において重要な位置を占めています。これらの業績は、木越氏が近世文学研究に遺した大きな遺産と言えるでしょう。

人となり

木越氏は、学術界だけでなく、多くの人々から親しまれる人物でした。高校や大学時代の友人には、公立小松大学副学長・金沢美術工芸大学名誉教授の横川善正氏がおり、温厚な人柄と深い知識で知られていました。

結論

木越治氏は、その卓越した研究成果と熱心な教育活動を通して、日本の国文学研究に計り知れない貢献をしました。その功績は、後世の研究者たちによって長く語り継がれることでしょう。彼の残した著作は、これからも多くの読者にとって、近世文学の世界への貴重な入り口であり続けるでしょう。そして、その研究姿勢と人柄は、未来の研究者たちにとって、常に模範となる存在であり続けるでしょう。

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