未完の対局

『未完の対局』の概要

『未完の対局』は1982年に公開された日中合作映画で、日中国交正常化の10周年を記念して制作されました。この作品は、戦後初の試みとして注目され、日本と中国の囲碁の天才棋士たちの物語を描いています。また、同名のノベライゼーションも発表され、映画と共に広く知られるようになりました。

製作の経緯

映画の元となる脚本は、北京映画撮影所に所属する李洪洲と葛康同によって書かれました。彼らは囲碁に深い愛情を持ち、この脚本を1979年の『電影制片』に発表した際、映画界の大物たちの関心を誘いました。北京映画撮影所の李華や夏衍の推薦を受け、大映社長の徳間康快がこの脚本を映画化することを決定し、監督には日本の中村登が予定されましたが、彼は制作途中に亡くなり、『君よ憤怒の河を渉れ』が成功を収めた佐藤純彌へと交代しました。

製作が進む中で、出演予定だった趙丹がクランクイン直前に亡くなり、代わりに孫道臨が起用されました。日本側では主人公に関する変更提案がなされましたが、中国側の情熱によってそれは受け入れられず、脚本の改訂作業が続けられました。1981年に日本での撮影が始まり、その後日中両国で公開されました。

あらすじ

物語は1924年、松波麟作六段が中国を訪れるところから始まります。松波は中国の棋王、況易山と対局するも、官憲の妨害により対局は中断されます。その後、松波は易山の息子、阿明の才能に惚れ、彼を日本に引き取ることを決意します。しかし、その後日本と中国は戦争に突入し、悲劇が続きます。

日本軍によって家族を失った易山は、一人で残された一方で、日本で修行を続ける阿明は、1941年には日本囲碁界の最高位である天聖位を獲得します。しかし、軍部からは日本帰化を強要され、阿明はそれを拒否し、ひどい裏切りにより命を失うことになります。

戦後、易山は混乱する日本で阿明を探し続けるが、彼の運命を知ったとき、松波もまた戦争で命を落とします。時は経ち、1960年に松波は日中囲碁交流の代表として中国を訪れ、易山と再会します。そこで松波は彼にすべての真実を語り、やがて二人は和解に至ります。

この作品には、実在した囲碁の名手呉清源が登場することが示唆されており、彼の影響力が描かれています。彼の名声は戦前から戦後を通じて日本囲碁界に大きな影響を与えました。脚本家たちは、呉清源からインスピレーションを受け、この物語を形作りました。

キャストとスタッフ

『未完の対局』には、複数の著名な俳優が参加しており、孫道臨、三國連太郎、劉新、沈冠初といった名前が挙げられます。また、制作陣には名監督の佐藤純彌を始めとした多くの才能豊かな人々が関わっています。音楽には林光が手掛け、映像美術には木村威夫の名があり、これにより作品は評価を受けました。

受賞歴と評価

本作は数多くの映画賞を受賞し、特に1982年度の毎日映画コンクールでは日本映画優秀賞を獲得しました。また、モントリオール世界映画祭でもグランプリを受賞し、国際的な評価も得ました。中国国内では、制作段階から期待が高まり、地元の観客から温かい歓迎をうける一方、日本では作品内容を巡る反発も見られました。

まとめ

『未完の対局』は、複雑な日中関係と囲碁の深い魅力を描いた貴重な作品です。この映画は、歴史的背景や人間関係の苦悩を通じて、異文化交流の重要性を再確認させるものであり、視覚だけでなく、思考をも刺激する名作として位置づけられています。

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