末吉宮

末吉宮（すえよしぐう）

末吉宮は、沖縄県那覇市首里末吉町の末吉公園内に鎮座する神社で、琉球八社の一つとして知られています。旧社格は無格社であり、歴史と文化が深く刻まれた場所です。

祭神

末吉宮では、主祭神として以下の熊野権現三柱を祀っています。

伊弉冉尊 （いざなみのみこと）
速玉男尊 （はやたまをのみこと）
事解男尊 （こよさかをのみこと）

また、別鎮斎として以下の神々も祀られています。

土祖神 （つちみおやかみ）
澳津彦命 （おくつひこのみこと）
澳津姫命 （おくつひめのみこと）
産土神 （うぶすなのかみ）

これらの神々は、末吉宮が地域の人々にとって重要な信仰の場であることを示しています。

由緒

末吉宮の創建は、15世紀の景泰年間（1450年 - 1457年）に遡るとされています。その起源については、以下のような伝承が残されています。

琉球王国第六代国王である尚泰久王の時代、天界寺の住職であった鶴翁和尚が、若い頃に倭国で修行していました。その際、熊野に向かって「もし私が学道の修行を達成したら、帰国後に必ず熊野へ参詣します」と誓いました。修行を終え帰国後、鶴翁和尚は王に参詣の許可を願い出ますが、王はこれを許しませんでした。

それでも鶴翁和尚は何度も参詣を願い出ました。ある時、夢に人が現れて「志を遂げたいのであれば、北山に向かって大声で呼びなさい。応じる所に霊験があるだろう。そこがあなたの居場所となる。私は熊野権現である」と告げました。

夢から覚めた鶴翁和尚は、その言葉に従い、一峰に登り声を上げると、前の山にこだましました。そこを訪ねてみると、険しい岩場であり、霊地とも思える人跡未踏の場所でした。そこには鬼面があり、それを霊験であると拝みました。このことを王に伝えたところ、王もまた霊夢を見ており、この出来事を無視できないと考え、大臣たちに命じてこの地に大社を建立しました。また、鶴翁和尚がこの場所を歩いた際に鏡を見つけ、それは霊光を放っていたため、社殿内陣に納められました。

この伝承は、1648年に初版が刊行された『琉球神道記』にも同様の内容が記されています。

また、『琉球国由来記』には、末吉宮の別当寺であった万寿寺（現在の遍照寺）についても記述があります。この寺は真言宗八公寺の一つであり、末吉宮の建立と同時に創建された可能性も指摘されています。

末吉宮は官社として、王府から神職の役俸や営繕費が支給されていました。神職としては、祝部、内侍、宮童がおり、神楽の際に着用する衣装はすべて王府の寺社座から支給されていました。

近代以降

明治時代に入り、琉球処分によって琉球王国が廃止され沖縄県が設置されると、末吉宮は近代社格制度により無格社となりました。沖縄県行政府は末吉宮を村社にしようとしましたが、経済的な問題や施設不備により実現しませんでした。

その後、末吉宮は経済的にも信仰的にも衰退し、荒廃が進みました。昭和14年（1939年）には、沖縄県振興事業による復興計画が持ち上がりましたが、明治末期まで残っていた拝殿は失われ、昭和11年（1936年）に国宝指定を受けていた三間社流造の本殿も、屋根瓦がほとんど落ち、建物の多くが朽ち果てていました。

さらに、沖縄戦の激しい砲撃により、本殿は礎石、柱2本、虹梁を残して爆散してしまいました。現在見られる社殿は、残された礎石と資材を基に、昭和47年（1972年）に復元されたものです。

文化財

末吉宮には、以下の文化財があります。

沖縄県指定有形文化財
磴道
史跡
末吉宮跡

まとめ

末吉宮は、琉球王国時代から沖縄戦、そして復興を経て現代に至るまで、数々の歴史的な出来事を経験してきた神社です。その歴史と文化は、沖縄の歴史を語る上で欠かせない要素であり、地域の人々の信仰の中心として、現在もその役割を果たしています。

参考文献

袋中良定 著、明治聖徳記念学会 編『琉球神道記』明世堂書店、1943年10月。
伊波普猷、東恩納寛惇、横山, 重 編『琉球史料叢書 第1』井上書房〈琉球史料叢書〉、1962年6月。 ‐ 『琉球国由来記』巻1から巻11を所収。
鳥越憲三郎『琉球宗教史の研究』角川書店、1965年3月。
加治順人『沖縄の神社』ひるぎ社、2000年10月。
石上敏『末吉宮論‐中世日本との関わりの中で‐』大阪商業大学論集　第180号、2016年2月。

関連項目

九州・沖縄地方の史跡一覧

外部リンク

国指定文化財等データベース
* 沖縄県神社庁公式サイト　末吉宮

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