末川博

末川 博:民法学の巨星



生い立ちと教育


末川博(すえかわ ひろし)は、1892年11月20日山口県玖珂郡玖珂町(現在の岩国市)に生まれました。旧制岩国中学を経て1914年に第三高等学校を卒業し、1917年には京都帝国大学法科大学を卒業しました。さらに1919年には京都帝国大学大学院法科を修了し、大学の講師として教育界に足を踏み入れました。1917年から1920年にかけて講師・助教授を務め、1922年から1924年にはアメリカで法律研究に従事しました。

学問的業績


1925年には京都帝国大学教授として民法ドイツ法を担当。1931年には法学博士の学位を取得し、論文『権利侵害論』を発表しました。末川は不法行為法の研究を中心に活動し、現行民法における「権利濫用の原理」を確立させたことが評価されています。

彼は1933年に発生した「滝川事件」を受け、京都帝国大学を辞職。以後は大阪商科大学や同志社大学で教鞭を執るなど、学問の自由を守るために活動を続けました。1946年立命館大学学長に就任すると、「平和民主主義」を教育の理念に据え、大学改革に着手しました。

経歴の転機と影響


立命館大学での彼の取り組みには、全学協議会制度の創設や民主的な運営体制の構築が含まれます。特に1949年には、学生と教職員の代表を含む総長公選制を導入しました。教育理念として「立命館民主主義」を掲げ、学生との協議の場を拡大し、報告と意見を重視しました。これにより、学生や教職員が共に学府を運営するという理念が根付いていきました。

文化的貢献


末川はまた、1950年に日本学士院の会員に選任されるなど、学問の発展に寄与しました。彼の実績の中でも特筆すべきは、岩波書店と共に編纂した『岩波六法全書』です。これはそれまでの法規集と比べ、利用しやすさが改善され、今の形に近い法律文書の形式を確立しました。この六法全書の発行は法律界だけでなく、一般市民にとっても大きな意義を持ちました。

最後の時期と家族


1977年に他界するまで、末川は法学者としてだけでなく、教育者としても多くの若手研究者を育て上げました。末川の家系では、長男の末川清が立命館大学の歴史学教授となり、彼の理念を次世代へと受け継いでいます。また、彼は名誉教授として歴史学の発展にも寄与しました。

末川博の思想


末川の思想には「法の理念は正義であり、法の目的は平和であるが、法の実践は社会悪と闘うことだ」という強い意志が現れています。彼の著作には民法や憲法に関する深い考察が色濃く表れ、多くの法学者に影響を与え続けています。自伝『彼の歩んだ道』や、『権利侵害論』などの著作は、彼の学問の軌跡を知る上で非常に貴重な資料となっています。

末川博は、日本の法学界における不朽の名声を持ち、後世に大きな足跡を残した学者として認識され続けています。

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