末広町 (函館市)

函館市末広町は、北海道函館市の西部地区に位置する町丁です。函館山の山麓部にあたり、函館港の奥部に面しています。この地域は、函館が古くから港湾都市として栄えてきた歴史を色濃く残しており、特に明治時代や大正時代に建てられた数多くの歴史的建造物が今も軒を連ねています。

町域の成立と名称の由来

末広町の町域は、1965年（昭和40年）7月1日に実施された住居表示によって再編されました。それまでの末広町、東浜町、船場町の大部分に加え、会所町、相生町、恵比須町の一部を統合して誕生した新しい町です。町名の由来には、この地の歴史が反映されています。かつて「内澗町（うちまちょう）」と呼ばれた旧町域は、1881年（明治14年）に基坂から大三坂までのエリアに加え、地蔵町の一部を取り込んで広がりを見せました。内澗という名は、大森浜や山背泊といった外側の海岸に対して、港の内側に位置することに由来するとされています。また、この場所が郊外から来た荷馬をつなぐ場所であったことから、かつては「馬糞町」という通称でも知られていました。新しい町名である「末広町」には、「末広がり」という縁起の良い願いが込められています。

歴史と変遷

末広町およびその周辺を含む函館市西部地区は、日本の近代化において重要な役割を果たしました。特に港町としての機能は、この地の発展を牽引しました。明治時代には、日本で最初の気象観測所である「函館気候測量所」が、この末広町の旧船場町にあたる場所に開設されています。これは現在の函館地方気象台の前身にあたります。また、1907年（明治40年）の明治40年函館大火は、市街地に甚大な被害をもたらしましたが、その復興計画では、函館駅を現在の場所から船場町へ移転させる案が検討されました。しかし、これは函館区議会での採決の結果、わずかな差で否決され、実現には至りませんでした。

海に面した末広町には、かつて重要な港湾施設も存在しました。東日本フェリーが使用していた末広町岸壁は、1968年（昭和43年）にフェリー桟橋として開設されましたが、施設の手狭さや、将来的に港の機能が七重浜地区や上磯地区（現在の北斗市）へ移るという計画を見越し、1976年（昭和51年）に港町へ移転しました。その後、1993年（平成5年）の北海道南西沖地震で被災し、一部は立ち入り禁止となりましたが、函館市の再開発構想に基づき、周辺の岸壁と一体的に2018年（平成30年）に「函館港末広緑地」として整備され、市民の憩いの場となっています。

現在の末広町

現在の末広町は、歴史的な景観を保ちつつ、生活と観光の拠点としての機能も担っています。主要な道路としては、青森県大間町まで海上区間を含む国道279号および国道338号が通っています。また、北海道道675号や北海道道457号も町内を走っています。公共交通機関としては、函館市電の

十字街停留場
末広町停留場

が利用でき、市民の足として親しまれています。バス路線では、函館バスや北海道バスが十字街停留所に停車し、特に南部坂の坂下、函館市地域交流まちづくりセンター前に位置するこの停留所は交通の要所となっています。

町内には、以下の公共施設があります。

函館市企業局（アクロス十字街内）
函館市地域交流まちづくりセンター
* 北方民族資料館

金融機関としては、北海道銀行の十字街支店がサービスを提供しています。商業施設では、地域住民の生活を支えるコープさっぽろ末広西店があります。そして、函館港沿いに建ち並ぶ金森赤レンガ倉庫は、かつての倉庫群を改修・活用した複合商業施設として、多くの観光客で賑わっており、末広町の景観と魅力を象徴する存在となっています。

かつては、市電の十字街停留場近くに東宝直営の映画館、東宝銀映座も存在しましたが、現在はその姿を見ることはできません。

まとめ

末広町は、函館の開港以来の歴史が息づく町であり、歴史的建造物と現代の施設が調和した独特の雰囲気を持っています。港湾都市としての過去、日本最初の気象観測所の設置、大火からの復興計画など、多くの歴史の舞台となってきたこの地は、今もなお函館の魅力的なエリアの一つとして、人々に親しまれています。函館山からの眺め、歴史的な街並み、そして港の風景が一体となった末広町は、訪れる人々に深い印象を与えています。

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