末長敬司

末長敬司：国際的な視点と情熱を注ぐ映画作家

末長敬司氏は、映画監督、脚本家、プロデューサー、そして俳優と、多岐にわたる才能を発揮する日本の映画界の注目株です。1976年生まれ、京都府京都市出身。彼のルーツには、日本統治時代の台湾で刑務官を務めた曾祖父や、大阪府警察学校の初代校長を務めた祖父といった、個性豊かな人物たちが存在します。

末長氏の経歴は、国際的な視野の広さを示しています。高校卒業後、韓国と中国で海外勤務を経験。さらに、東南アジア諸国を放浪するなど、多様な文化に触れてきました。こうした経験は、彼の独特な世界観や、国際的な映画制作への姿勢に大きな影響を与えていることは容易に想像できます。

2007年に日本へ完全帰国後、日本郵政公社に勤務しながらも、映画制作への情熱を燃やし続けました。2011年には、インディペンデント映画制作団体「星海電影制作公司（STARSEA FILMS PRODUCTION）」を設立。監督、脚本、編集など、映画制作のあらゆる工程に携わり、自身の作品を世に送り出しています。

初監督作品『爛れる／Becomes Sore』と海外進出

彼の初監督作品である短編映画『爛れる／Becomes Sore』は、京都造形芸術大学在学時から商業映画で活躍していた女優、大西礼芳氏を主演に迎えました。この作品は、2014年の第6回福岡インディペンデント映画祭2014（FIDFF2014）や第10回山形国際ムービーフェスティバル2014（YMF2014）で高い評価を受けました。特にYMF2014では「日本テクト賞」を受賞するなど、早くからその才能を認められました。

その後、末長氏は『爛れる／Becomes Sore』のインターナショナル版を制作。英語字幕を追加し、再編集を施すことで、海外の国際映画祭への出品を目指しました。その戦略は成功を収め、アメリカ、フランス（カンヌ国際映画祭）など、世界各地の映画祭で上映される機会を得ました。数々の賞にノミネートされ、優秀編集賞を受賞するなど、国際的な評価も確かなものとなりました。

長編SF映画『星を継ぐ者／Inherit The Stars』

末長氏の代表作の一つに、SF長編映画『星を継ぐ者／Inherit The Stars』があります。当時まだ大学生だった吉岡里帆氏を主演に迎え、2013年から制作が始まりました。しかし、撮影期間中は、助演女優の病気降板や悪天候による撮影中断など、数々の困難に見舞われました。それでも、予定を大幅に超過しながらも、完成にこぎつけました。

当初の185分あったフィルムは、監督自身の手で155分、さらに撮影監督の地村俊也氏によって145分まで編集されました。この「145分版」は、福岡インディペンデント映画祭2015で上映されました。その後、末長氏は未使用カットを追加し、CGを強化した「ディレクターズカット版」を製作。このバージョンは、コソボの映画祭で新人映画賞を受賞するなど高い評価を得ました。さらに、その後も『星を継ぐ者』は、様々なバージョンで国内外で上映され、高い評価を得ています。

キャストへのこだわりと国際的な制作体制

末長氏は、渡辺裕之氏、サヘル・ローズ氏など、日本を代表する俳優だけでなく、海外の俳優やスタッフとも積極的にコラボレーションしています。例えば、『それで世界は救われなくても／Till the End of the World』では、ポーランド人の作曲家を起用するなど、国際色豊かな制作体制を構築。彼の作品は、日本国内にとどまらず、世界を舞台に展開されています。

バックパッカーとしての経験と映画への影響

末長氏は、16歳からバックパッカーとして世界中を旅しています。特に、21歳の時に訪れたロシアのサハリンでの経験は、彼の人生観や映画観に大きな影響を与えたと語っています。極寒の環境、経済的な困窮、そして廃墟のような街並み。こうした極限状況での体験は、彼の作品に深みを与えていると言えるでしょう。

シネマスコープサイズへのこだわり

彼は、デジタル時代における安易なビスタビジョンサイズの乱用を問題視し、シネマスコープサイズ、特に70mmフィルムサイズに強いこだわりを持っています。これは、彼の作品における映像美への高い意識を示すものでしょう。

末長敬司氏の活動は、彼の国際的な経験、並々ならぬ努力、そして映画への情熱によって支えられています。彼の今後の活躍から目が離せません。

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