本因坊秀栄

本因坊秀栄

本因坊秀栄（ほんいんぼう しゅうえい）は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した囲碁棋士です。嘉永5年（1852年）に江戸で生まれ、明治40年（1907年）に56歳で亡くなりました。本名は土屋平次郎といい、十三世林秀栄、十七世、十九世本因坊、名人という輝かしい経歴を持っています。その平明な棋風は現代でも高く評価され、2008年には囲碁殿堂入りを果たしました。

生涯

本因坊就位まで

秀栄は、本因坊秀和の次男として本因坊邸で生まれました。11歳の時に十二世林柏栄の養子となり、林秀栄と改名しました。12歳で初段となり、16歳で林家十三世を継ぎました。しかし、方円社に対抗するため本因坊家に戻り、五段で十七世本因坊となりました。

秀栄は、若くしてその才能を発揮し、1869年には「六人会」という研究会を立ち上げました。また、伊藤松和七段との十番碁では7勝2敗1ジゴという好成績を収めました。その後、村瀬秀甫と共に美濃、尾張、伊勢、京阪を遊歴し、各地で碁を打ちました。1876年には、中川亀三郎、小林鉄次郎、藤田方策とそれぞれ十番碁を打ち、その実力を示しました。

1879年、村瀬秀甫らが中心となり方円社が設立されましたが、秀栄は家元の権威を認めない方円社のやり方に反発し、方円社を脱会しました。その後、本因坊家を継ぐために林家を廃絶し、十七世本因坊秀栄となりました。方円社との対立は激化しましたが、最終的には和解し、一時的に本因坊位を譲り、自身は土屋秀栄と名乗りました。

しかし、秀甫が急逝したため、秀栄は再び本因坊家を継ぎ十九世本因坊となりました。この頃、生田昌集の支援を受け、後にその娘と結婚しました。

名人への道

1892年、秀栄は「囲碁奨励会」を発足させ、高田慎蔵らの支援を受けながら、門下生の育成に力を入れました。その後、「四象会」という研究会を立ち上げ、多くの若手棋士を育てました。1898年には八段に昇段し、1904年には援助が打ち切られ四象会は閉会となりました。

1906年、秀栄は他の棋士を先二以下に打ち込み、推されて九段に昇段、名人となりました。しかし、翌1907年に流行感冒により56歳で亡くなりました。秀栄の死後、本因坊位をめぐって混乱が起きましたが、最終的には弟の秀元が二十世を継ぎ、田村保寿に譲ることで事態は収拾しました。

主な戦績

秀栄は多くの十番碁を打ち、その戦績は以下の通りです。

1870年 伊藤松和十番碁（秀栄先）7-2-1
1876年 中川亀三郎十番碁（秀栄先）
1876年 藤田方策十番碁（互先、4連勝で藤田先相先）
1876-77年 小林鉄次郎二十番碁（互先、9局目まで6-2-1で小林先相先、18局まで7-2-1で小林定先）13-5-2
1877年 黒田俊節十番碁（互先）4-6
1884-86年 村瀬秀甫十番碁（秀栄先）5-5
1896年 石井千治十番碁（石井先）8-2
1897年 安井算英十番碁（算英先相先）6-4
1898年 第2次安井算英十番碁（算英先、4局目まで4-0で先二先）8-2
1900年 雁金準一十番碁（雁金二先二）

棋風・人物

秀栄は早見え早打ちの棋風で知られており、その平明な棋風は多くの棋士に影響を与えました。また、犬養毅、大久保利通といった政治家とも親交があり、朝鮮から亡命していた金玉均とも親密な関係でした。

有名局

1895年の田村保寿との対局では、左辺5子のサバキを問われた場面で、白1のハネダシから白3と取られている2子を3子にした妙手が語り継がれています。

著書・出版物

秀栄は、多くの著書や出版物を残しました。主なものとしては、『定石 囲碁新法』、『囲棋奨励雑誌』、そして『秀栄全集』などがあります。

脚注

秀栄に関する多くの研究や書籍が存在し、その生涯や棋譜は、現代でも多くの人々によって研究されています。

参考文献

小島直記「本因坊秀栄」（『回り道を選んだ男達』新潮社 1987年、『囲碁 日本の名随筆別巻1』作品社 1991年）
右遠俊郎『明治の碁―本因坊秀栄の生涯』本の泉社　2002年
相場一宏、福井正明「碁界黄金の十九世紀 (第29、30回)」（「碁ワールド」2004年11、12月号）

関連項目

方円社
終身名人の一覧
世襲本因坊の一覧

外部リンク

木石庵「本因坊秀栄」
本因坊秀栄伝（菊池晩香）（日本漢文の世界）

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