本多正寛

本多正寛（ほんだ まさひろ）

本多正寛は、江戸時代後期の駿河国田中藩の第6代藩主であり、正重系本多家11代当主です。文化5年（1808年）に5代藩主本多正意の長男として生まれ、文政12年（1829年）に父の死により家督を継ぎました。

藩政改革

正寛は藩主就任後、ただちに藩政改革に着手しました。その中心は財政再建であり、倹約の奨励や風紀の取り締まりを徹底しました。また、農政にも力を入れ、作物の生育を妨げる雑木の伐採や、油木・薪炭用の植樹を奨励しました。さらに、酒屋などから冥加金を徴収し、その資金を貧民救済に充てるなど、弱者救済にも尽力しました。

天保3年（1832年）には、農学者である大蔵永常を登用し、その知識と経験を藩政に活用しました。天保7年（1836年）には奏者番に任じられ、幕府との関係も重視しました。

軍制改革と教育

正寛は、軍事力の強化にも意欲的でした。天保8年（1837年）には藩校「日知館」を創設し、藩士の教育に力を入れました。さらに、洋式軍制を導入し、銃隊を編成するなど、軍事力の近代化を推し進めました。天保14年（1843年）からは大砲の鋳造も開始し、国防体制の強化に努めました。

災害からの復興

嘉永7年（1854年）には、大地震により藩内が大きな被害を受けました。正寛は、安政2年（1855年）から復興事業に取り組み、被災者の救済に尽力しました。これらの政策を通して、藩民からの信頼も厚かったとされています。

人物

正寛は、武術や書画にも優れていました。また、身分に関わらず実力のある人材を登用し、百姓出身の古谷道生を重用したことからも、その人物像が伺えます。

安政7年（1860年）2月17日、正寛は53歳で亡くなりました。跡は、実弟で養子の本多正訥が継ぎました。

正寛は、優れた藩主として、藩政改革を断行し、田中藩の発展に大きく貢献しました。その功績から、名君と称えられています。

系譜

父：本多正意
母：光（戸田忠翰の娘）
正室：睦（松平斉孝の娘）
養子：本多正訥（実弟）

もう一度検索