本多正訥

本多正訥（ほんだ まさもり）

本多正訥は、幕末・明治維新期に活躍した大名で、駿河田中藩の第7代藩主であり、後に安房長尾藩の初代藩主（知藩事）となりました。正重系本多家12代当主です。

生涯

明治維新まで

田中藩第5代藩主本多正意の七男（または六男）として生まれました。安政3年（1856年）に兄である正寛の養子となり、翌年には将軍徳川家定に拝謁しました。その後、従五位下伯耆守に叙任され、後に紀伊守に改めました。万延元年（1860年）に正寛が死去したため家督を継ぎ、田中藩の第7代藩主となりました。

文久2年（1862年）には、新設された学問所奉行の一人に就任し、秋月種樹とともに藩の教育を担いました。文久3年（1863年）には、下総国にあった田中藩の飛び地領を管轄するため、流山郊外の加村に屋敷（加村陣屋）を建設し、江戸深川にあった下屋敷の人員を移転させました。

元治元年（1864年）には駿府城代に就任しました。戊辰戦争中の慶応4年（1868年）には、尾張藩の勤皇誘引使に対して勤皇証書を渡し、駿府城の引渡しに同意しました。徳川宗家当主である徳川家達が駿河国・遠江国に移されると、駿府城を家達に引き渡しました。また、徳川家の静岡入封に伴い、田中藩は新政府から安房国・上総国に4万石の代替地を与えられ、長尾藩への移転を命じられました。

安房長尾藩

新領地の藩庁は、藩士で兵学者の恩田仰岳の選定により、白浜に近い安房国長尾村滝口に陣屋を建設することになりました。移転先の準備が整うまで、正訥や藩士の多くは旧領内藤枝宿の寺院に滞在しました。

明治2年（1869年）には、藩校日知館を安房に移転しました。同年、版籍奉還を行い、知藩事となりました。しかし、この年の夏に台風によって建設中の長尾陣屋が倒壊してしまいました。長尾での陣屋建設には反対論も多く、恩田仰岳は譴責処分となりました。翌年には、館山に近い北条村鶴ヶ谷に新たな藩庁（北条陣屋）や藩士居住地の建設が進められ、明治3年（1870年）5月に正訥は北条陣屋に着任しました。

明治3年（1870年）12月14日、隠居し、養子である正憲に家督を譲りました。明治18年（1885年）に59歳で死去しました。

人物

博学の藩主として知られ、高鍋藩主秋月種樹、唐津藩主小笠原長行とともに「天下の三公子」と称されました。著書に『清史逸話』があります。

家族・親族

父母
本多正意（実父）
本多正寛（養父）
正室、継室
松平文子：松平信発の養女、秋山正光の娘（正室）。文久2年（1862年）に死去。
鋭：稲垣長剛の次女（継室）
養子
本多正憲：菅沼正貞の長男で、正訥の甥にあたります。

脚注

参考文献

霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成』（霞会館、1996年）

外部リンク

デジタル版 日本人名大辞典+Plus『本多正訥』 - コトバンク
房州長尾藩－明治維新の大名と武士たち－ - たてやまフィールドミュージアム（館山市立博物館）
長尾藩の史跡をめぐる - たてやまフィールドミュージアム

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